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霊術院出のエリート
第183話
しおりを挟むクリーチャーまでの距離はおよそ数百m。
動く対象を射る時、並の射手なら狙いを定めるのに時間を要するだろう。
対象が全方向への移動を可能にできるならば、その難易度はさらに上がる。
キョウカが視点を「中央」に置いたのには理由があった。
それは矢を射る「方向」が、彼女の中ですでに“定まっていた”からでもあった。
ギリギリまで引きつけて、射る。
『霧雨(きりさめ)』
彼女は魔力を充填させ、弓へと注いだ。
彼女のギア、——五月雨江は、矢の一本一本が雨のように変形する能力を持つ。
矢の形状は普通の矢と変わらない。
ただしその表面は氷でできていて、透き通る無色透明の見た目を形作っている。
キョウカは引きつけた弦を離した。
弓の両端に張られた糸が、激しく振動する。
ドドドドッ
強い“しなり”が空間に触れる。
指先から放たれた矢が上空へと舞い上がる。
矢は一本ではなかった。
彼女の放った『霧雨』は、空間の模様を変えるほどの夥しい矢の「雨」を、空間内に“降らせた”。
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