COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

バトルフェスティバル 地区予選編③

第１２５話

　リンは右手でカーティスの槍を掴む。

　この“距離”。

　この間合い。

　カーティスは何かを察知し、槍を引き抜こうとする。

　それを許さなかったのは、心臓を貫かれたはずのリンだ。


　バチッ

　バチバチッ


　槍の柄を掴んだ右手には、彼女の「ギア」が呼び覚まされていた。

　スパークを身に纏う、鉤爪のような鋭い牙を持つ“手甲剣“が。


　「『迅雷狼影』。あれがリン姉のギアだ」


　手の甲を覆う電流の衣を纏った頑丈な装甲と、剣。

　特筆すべき点は、それが“打撃”のためではなく、敵の魔力を“噛み砕く”ために用いられるということ。

　危険を察知したカーティスは槍から手を離す。

　その判断は賢明だった。

　リンによって槍の柄は噛み取られ、すでに使い物にならなくなっている。

　リンはかろうじて息がある状態だった。

　(それなのになぜ…？)

　カーティスは状況を理解できていない。

　束の間、リンの魔力が一気に膨れ上がる。



　ボッ…！


　ドドドドドドドド



　「…ふう。間一髪だったよ」


　急速な回復を見せるリンの体。

　それは回復というよりもむしろ、「再生」だった。

　カーティスの槍が分解され、リンの体へと同化していく。

　カーティスの攻撃は間違いではなかった。

　それは事実だ。

　リンが回復しきる前にトドメを指す。

　その一点に注力された攻撃への一歩は、戦況を乗り切るために必要な一手だった。

　ただ…


　「問題は、攻撃した「箇所」だ。さっき言ったように、リン姉は心臓を貫かれても動ける。そしてここでリン姉の特性が生きる」


　リンのギア、『迅雷狼影』は、魔力で構成されたあらゆる物質を分解する「牙」を持つ。

　リンの特性である超電導はあらゆる魔力流域に干渉できる能力だが、ある場面に於いてこの２つは絶妙に噛み合う。

　それはこの状況に於いても同じことが言えた。