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試合

第695話

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 部屋のベットの上に寝転んで、天井を見ていた。

 木でできた天井の上にぶら下げられている電灯が、部屋全部の光をさらって、中心に近づこうとしていた。

 私はそのすぐそばで、静かに息を潜めながら、次に何が起こるかを見ていた。

 美しい被写体。

 それからその様々な色彩のウェーブは、一挙に押し寄せる波となって粒となって、世界を虹色に染めていった。

 シーツの上で動きにくそうな私の体が、肩から下にかけて僅かに動き出したのを見て、時間がどこかで止まっていないか、それともどこかで、誰かが行き倒れていないかを窓の外や床の上でチェックしようとした。

 私の指の先は、動かなかった。


 どうしよう、と思った時は、ある。

 にっちもさっちもいかない、そういう感情の矛先に、置き去りを食らったような気がして、たまらなく悔しくなる時が。

 いてもたってもいられなくなるっていうのは、そういうときに一番近くに感じる精神力の確かさで、訪れる。

 それが時折隙間もなく顔を見せるようになると、タイミングよく息を合わせながら、1日のうちに何度もうずくまる習性を、惰性的に覚えるようになった。

 勉強しなきゃなって、そのたびに思うけれど、教科書は広いんだ。

 広すぎる。

 100キロ平方メートルの大地を、好きに使っていいですよって言われた時に、誰が「やったー!」って素直に喜べるんだろう。

 有効活用できる場がありすぎて、温泉を掘り当てる場所さえわからないのに…。

 
 机の方を見た。

 相変わらず散らかり放題な教科書や筆記用具たちは、今にもこぼれ落ちそうな窮屈さで振動しつつ、机の外へとはみ出そうとしていた。

 床に落ちるか落ちないかのギリギリのライン線上で、綺麗に畳まれた帯になり、青や黄色や赤や、水色のコントラストを生やしていって、少しずつ下に伸びていく。

 その帯が、ツルのように床や壁に伸び続けていくのを感じて、しかもその長い長い線の上っ面に、ロープウェイの如く、しなやかにぶら下がって降っていく類人猿の軌跡を見た。

 よく見ると帯の線の一直線上には、猿がいて、手を振りながら、木から木へとジャンプしていくように、華麗な跳躍力で机の縁を掴んでいた。

 机の上にバナナでもあるのか。

 思い思いに、立ち上がり、今よりも少し近い位置で、机の方を見ようとした。

 するとその猿は私の視界から逃げるようにジャンプして、今度は天井の角に貼り付きながら、「こっちだよー」と、手を振っているように見えた。

 騒がしい。

 猿が1匹、私の部屋の片隅で、いろんな色や形や線と一緒に、踊っているこの慌ただしさ。

 まるでSF映画の1シーンのようだ。

 映画館には私1人。

 右手にはぎゅうぎゅうに詰まったポップコーンと、甘い甘いチュロス。
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