雨上がりに僕らは駆けていく Part1

試合

第６７８話

　亮ママの葬儀を終えてから、１年が過ぎた。

　私たちは、夏の大会に向けて猛練習を積んでいた。

　１年の夏は全国には行けたけど、２回戦止まりだった。

　やっぱ相手が３年になると、体格差がキツい。

　技術的な部分もそうだけど、リーチとか間合いとかの差がもろに影響出るんだよね。

　本人はそんなことないって言うんだけど、２０センチくらい身長に差があるとさすがに…


　毎日、一緒に練習した。

　亮平の自転車の後ろに乗って、学校に向かう日々。

　時々喧嘩したりもするけど、まあ、相変わらずっていう感じで。

　
　『日本一の剣士になる』


　目標は変わらなかった。

　体育館でも、グラウンドでも、晴れた日の午後も、いつも。

　私は私で、色々勉強したんだ。

　名ばかりではあるが、一応剣道部のマネージャーだもん。

　やっぱり詳しくないとダメでしょってことで、彼に一から教わった。

　知ったところでって感じではあるが。


　この１年、竹刀を振ってる姿をずっと見てきた。

　それはこの世界に来る前からもだ。

　授業が終われば、速攻で体育館に向かった。

　毎日が楽しかった。

　マネージャー業務はキツいが、誰かさんの頑張っている姿を見ると。

　時々サボろうとしてる時もあるが、そういうときはほっぺたをつまんで連れてきてる。

　イタタタタタタ！！

　という悲鳴が体育館中に響き渡ると、毎度の如く「亮平くんかわいそう…」という声が周囲から聞こえてくるが、みんなわかってないんだよ。

　だって日本一だよ？

　そんな簡単になれるわけないし、全国にはたくさんの猛者たちがいる。

　サボってる暇なんてないんだ。

　それを本人がわかってるのか、わかってないのか…


　すぐに天狗になるから困るんだよね。

　練習試合でほとんど負けないし、チームの誰よりも強いからってあんまり調子に乗るなよと言いたい。

　いちばん肝心なことは「心」だって、先生は言ってるでしょ？

　「俺が最強」とかアホなこと言ってたら、すぐに説教タイムに突入してた。

　もちろん私が指南役だ。

　せっかく指導してやってんのに、はいはいとか、アイツはテキトーな返事ばっかしてるけど。