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がんばれ、負けるな

第641話

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 私は、2人が眩しかったんだ。

 羨ましいくらいに、大きな目標を持ってる2人が。

 どこまでも純粋に空を見上げて、透き通った目をしてた。

 まっすぐ竹刀を振る彼も。

 大きく振りかぶるキーちゃんも。

 逆に私は何をしようって、しょっちゅう思ってた。

 そりゃ、キーちゃんのベストパートナーになるんだって思ってたけど、自分1人じゃ何もできなかったし…


 時々、思ってたんだ。

 私には何ができるんだろう。

 2人みたいに、大きな「夢」を持てるかな?

 って。


 いつか私も、2人と対等な距離に立ち、全力で追いかけられる何かを見つけたいと思ってた。

 それが野球でも、バスケでも、剣道でも陸上でも、何でも良かった。

 夢中になれる何か。

 高い空を見上げられる何かを。


 「…なあ」

 「ん?」

 「部活とかやらんの?この前バスケに誘われてなかった?」


 大学の装置を使って、中1だった頃の自分にタイムリープしてから、もう一度バスケ部には入らなかった。

 アキラや綺音からは誘われるんだけど、私のミッションは、亮平の夢を叶えること。

 私に何ができるんだって話だけど、過去に戻る前に、キーちゃんと話したんだ。

 もし、亮平の未来を変えることができるなら、何をすればいいだろう?

 どんなことをすれば、彼の心を動かせるかな?

 キーちゃんは、大切なのは行動だって言ってた。

 内心「?」だったが、ようは、目を逸らすなってこと。

 そう言ってた。

 確かに、って思う部分があった。

 試合に来なくなって、学校にも来なくなった彼を見るのが辛くなり、彼から逃げた。

 応援するのをやめた。

 しても、どうせ辛くなるだけだからと思って。


 当時は、こっちもいっぱいいっぱいだったんだ。

 部活も勉強も忙しいし、クラスも違ったしね。

 言い訳を並べればたくさんある。

 キリがないくらい、たくさん。

 本当は、逃げちゃいけなかったんだ。

 友達だったからこそ、彼のそばにいなくちゃいけなかった。

 キーちゃんはそれをわかってた。

 彼と「友達」なら、辛い時にこそ、近くで応援してあげなきゃいけない。

 私にできることは、手を引っ張ってあげることなんじゃない?

 がんばれって、言えるかどうか。

 それが届くかどうかじゃなくて、まずは動く。

 それから始めたら?


 「なるほどな」って思った。

 だから、彼専属のマネージャーとして、声を張り上げてるんだ。

 うっとしいと思われてるかもしれないが。
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