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第596話
しおりを挟む「このグループに「れおな」って平仮名の人がおるやん?直接連絡してみた方が良くない?」
「え、でも早川さんなん?それ」
「他に「れおな」なんて名前おらんやろ?」
「わからんでそれは。カフェの人は?」
「カフェの人は知り合いみたいやったけど、友達でもなんでもないし、今日はパン研究会のメンバーはいないみたいよ」
「…そっか、じゃあ連絡する?」
「その方が良くない?」
連絡するにしても、「はじめまして」とか言ったら確実に未読スルーされる。
どストレートに「あなたに魔の手が迫っています!」とか言ったら即ブロックされるだろう。
第一、「れおな」って人が早川さんで確定なわけではない。
どうしよ。
「ひとまずグループで挨拶してみたら?」
キーちゃんがそう言う。
挨拶って?グループに?
「そうそう」
「なんて言うん?はじめましてとか?」
「他にもっとあるでしょ。「サークルに参加した大坂です。よろしくお願いします」とか」
「待って待って。そもそもこのグループにどうやって参加したん?」
今思った。
このグループのリーダーが誰かは知らないが、いつの間に承認をもらって参加することができたんだろう。
アキラに聞くと、涼しい顔でドヤっている。
「カフェの前に黒板があったんや。そこでメンバー募集のQRコードがあってな」
「スキャンしたん?」
「せや」
便利な世の中ですね。
アキラによれば、この女子大の学生であれば、グループにいつでも歓迎しますと書いてあったそうだ。
「ここの学生限定やん…」
「そんなんどうとでもなるやろ。ちなみに参加すんのに学年と学部を教えんといけんかったんやが、一年の家政学部ってことにしといた」
用意周到だな…。
んで名前は?
「そりゃ、私の名前だけど」
「大丈夫なんかなそれ。バレたりしない?」
「大丈夫やろ。実際に入れたし」
まあ確かに。
仮にバレても仕方がない。
今はなりふり構ってなんかいられないからね。
グループのトーク画面を開き、文字を打つ。
「新しく入った須藤アキラです。よろしくお願いします」
これでいいだろう。
さっそく既読が1になってる。
グループの人たちも挨拶を返してくるだろうから、うまい具合に対応しないと。
「「れおな」さんも見てくれるかな?」
「そのうち見てくれるやろ。でもその次は?」
怪しいものではないということを伝えなきゃいけない。
そのためのプロセスとして、ちゃんと常識がある新人ってことも伝えなきゃ。
ピコンッ
「あっ、さっそく!」
『2年看護学部の石井里佳子です。よろしくお願いします』
なんだ、違う人か…。
その後もしばらく様子を見ていたが、「れおな」さんからの挨拶はなく、他のメンバーからの挨拶&自己紹介ばかりが更新された。
「挨拶、ないね…」
夕方の5時を回って、一通りメンバーからの挨拶が来ていたが、「れおな」さんからはまだ来なかった。
グループリーダーの「陽美」さんから、個別のトークが来ていたのを見て、アキラが返信する。
「後日、研究室でパン焼くらしいで?「行く」って返信しとく?」
「うん…まあ、とりあえず無難に行こや。どのみち嘘がバレるんやし、今は話を合わせよう」
ほんとにごめんなさい研究会の皆さん。
事件が片付いたらちゃんと事情を説明して謝るから、今は利用させてください。
「よし、送信」
しかし、肝心のれおなさんとは連絡が取れない。
もう夜が近いし、いつまでも待ってるわけにはいかない。
返信がないのは、すでに事件に巻き込まれてる可能性があるためで、私たちは各々に不安の声を上げた。
「もし、事件がすでに発生してたら、どこで襲われることになるんや」
「縁起でもないこと言うな!」
「せやけど、今日はちょうど1週間前やで?その可能性も十分あり得るやん」
「あり得るやろうけど…、ああやだ、考えたくない」
「死体遺棄現場に行ってみるか?襲われたとしても、まだ息があるかもしれんやん」
「アホか。死因は失血死やで?すでに襲われてたら、助かるわけない」
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