雨上がりに僕らは駆けていく Part1

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第５８５話

　トールサイズのダークモカチップ。

　窓際のカウンター。

　未来談義に花を咲かせている女子中学生、4人。

　未来談義？

　そう。

　今、私たちは、「作戦会議」を練っている。

　…なんか、デジャブな気もしなくはないが


　「それで、この日に事件があるの！」


　張り切って話している女子が1人。

　そしてその話に夢中になっている同級生、2人。

　コイツら、盛り上がりすぎてないか…？


　「タイムマシンってホントに存在するんや！」

　「ね！ワクワクするよな！？」


　…話が盛られてる気がするんだが、気のせいだろうか？

　キーちゃんは自分がアメリカにいたことを話していた。

　大学の研究で「時間研究」を行なっているという話を伝え、その研究過程で父親と一緒に仕事をしていたと。


　『タイムマシン』


　そんなとんでもワードが飛び出したのは、スタバに入店してわずか10分後のことだ。

　宇治抹茶のシフォンケーキに齧り付いたまま、思わず二度見してしまった。


　「今はもう出来あがっとるん？」

　「いいえ、まだこれから。でも近々、学会に発表するらしいわ。ニュースで取り上げられるかも」


　キーちゃんの父親は有名人だ。

　ネットで調べればすぐ出てくる。

　なにせ、未来のノーベル賞受賞者だし。

　2人がキーちゃんの話を信じたのは、たびたびテレビにも出てるおじさんの影響が強いだろう。

　誰もが知ってるハリウッドスターと家族ぐるみでつるんでいる写真を見せられたら、そりゃ誰だって「おー！」って思う。

　私も驚いたもん。

　キーちゃんのスマホの中にある、海外セレブたちとのプライベート写真を見て。


　「出来あがったら、私も乗りたい！」

　「私も！」


　そんなパンケーキが出来あがったみたいに言うな。

　タイムマシンなんてあるわけないだろ。

　世の中はまだ平成ですよ？

　わかってますか諸君。


　「楓は乗りたくないん？？」

　「へ？」

　「タイムマシン」


　…あー、えっとー。


　口裏合わせをしたし、一応キーちゃんの話に合わせなきゃいけない。

　なんたって今は、「作戦会議中」だから。

　2人を誘って、『未来を変えよう大作戦』を実施しようとしていた。

　理由は単純だ。

　キーちゃん曰く、物理的に未来を変えようって魂胆だ。

　なんでも、キーちゃんの病気と、私の存在が無関係であることを証明したいらしい。

　そのためにこれから起こる出来事を変えて、世界の「情報」を書き換えようとしていた。

　もちろんその話を間には受けなかった。

　でも、キーちゃんは真剣だった。