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位置について、よーい

第564話

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 『世界の楔』

 というのは、信号機の色を変え続けるという意味に、近いそうだった。

 クロノクロスネットワークと同期し、私の「特性」を利用することで、過去と未来の中間に、ランダムになり続けられる「確率⇄変数」を生み出せる。

 そうすることで、全ての事象をある1点に集約させ、1つの「確定性」を永久に喪失させる。

 簡単に言えば、今日という日に起こったことを、永久に抹消し続けるプログラム。

 サイコロの目が1になっても、6になっても、もう一度、そうなる前の「状態」に集合(結合)し、世界から「固有情報=固有状態」という加算的なリソースを排除し続け、連続的な運動の平衡性を”二分化=乱雑化”させた。

 それが、世界の崩壊を止める「物理的な方法」になったそうだ。


 私が「現在にいない」という意味は、ここにあるそうだった。

 そして、キーちゃんが言う「私の記憶を知っている」という意味も。


 「想像しづらいことかもしれないけれど…」

 そう前置きをして、こう言った。

 “あなたは、永遠にも等しい時間の中に漂い続けている”。

 生きることも死ぬことも許されないまま、「今」という1秒と、永遠に切り離され続けている。

 あなたが存在していると感じる「今日」は、実はもう存在していて、またはすでに失われたものかもしれない。

 あなたがタイムリープした先の世界は、存在と非存在の境界の上に、鏡と現実の間のような捉え所のない点を広げているかもしれない。

 あなたはすでに、世界から隔絶されている。

 存在することも、存在していないという“事態”にも到達していない特異点。

 世界で起こり得る可能性を生み出し続ける、限りなくゼロに近い、「確率の臨界点」だ。

 ——と。



 信じられなかった。

 キーちゃんの言っていることは、今この瞬間に起こっていることが、全部「嘘」だと、そう言ってもおかしくない状態に等しかったからだ。

 それだけじゃない。

 さっきまでいた世界も、あの交差点の上での出来事も、アキラや綺音との関係も、学校生活での思い出も、全部、嘘。

 それは幻だって、言われているに等しかった。

 私は今どこにも存在しておらず、夢を見ている。

 キーちゃんの言っていることは、それくらいぶっ飛んでて…
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