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【第8章】一瞬の風
第538話
しおりを挟む母さんには年明けに帰るって伝えてる。
北海道に行きたいなら1人で行けば?
私は家に帰るから。
こっちの意見なんて聞こうとしない。
それにすごくむかついた。
心配してくれるのはありがたいけど、少しはこっちの気持ちも汲んでくれない?
強く睨んでもダメ。
三角締めをかましてもダメ。
挙げ句恥をしのんで土下座してもダメだった。
ふざけんなっての。
そのくせ「初詣に行こう」だって?
どの口が言ってんだよ。
絶対行くか!
コノヤロウ。
「クレープも出るで?」
「だーかーら!!」
「そんな怒んなや」
「そりゃ怒るやろ」
「生きるか死ぬかやったら、どっちがええんや?」
「生きる方…」
「せやったら、問題は簡単やろ?」
「どこらへんが??」
「少しでも危険を減らさんと」
「他にいくらでも方法あるやろ?警察呼ぶとか、誰かに話を聞いてもらうとか」
「まともに聞いてくれると思うか?」
「やってみんことにはなにも始まらんやん」
「そんなことしとる間に襲われたら?」
これだ。
ああ言えばこう言う。
話してても埒があかないんだ。
昨日だって人が寝てるのに、カウントダウンしようとかうるさいし。
コタツにうずくまっていると、スマホを近づけてきた。
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キーちゃんは笑ってた。
楓はお母さんみたいだね?って、手を口に当てながら。
絶対行かない
ムスッとしていると、脇腹をくすぐってきた。
…おい
ふざけんなと思ったが、反応すると図に乗る。
だから無視した。
「俺の願い事を叶えると思って、な?」
願い事…?
とは?
「なんやねん「願い事」って」
「お前ん家に行こうと思っとった」
「はあ?」
「2014年の今日。俺たちにとっては過去やけど、あの日、一緒に地元の神社に参りに行こうと思ってライン開いてたんや。結局声かけれんかったけど」
中学最後の年越し。
友達とみんなでパーティーしてた。
1月のインターハイに向けて猛練習を積み、アキラん家でしばらく過ごしてた。
1月1日もだ。
初詣に行くって?
あの当時、そんなこと考えてたの?
「うむ」
意外だった。
あの頃亮平とは全然会ってなくて、連絡もしてなかった。
喧嘩したっきり、ラインさえ送ってない。
あんたと言えば不良仲間とバイク乗り回して、学校にはろくに来ないし…
「なぜに??」
単純に気になった。
そんな素振り一切なかったよね?
学校で会っても、目も合わさなかったじゃん。
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ろくに連絡してこなかったくせに。
「せやかて、避けてたのはそっちやろ?」
…はあ?
私が??
避けてないし、元凶と言えばあんたでしょ?
「俺、なんかした?」
「どの口が言っとんや」
「いや、ほんまにわからん」
いつから口を聞かなくなったのか、はっきりしたことは思い出せない。
理由も。
原因も。
わからんと言われたら、そりゃ私もそうだけど…
「そもそも、あんたが学校に来なくなったのが悪い」
「それで避けとったん?」
「やから!避けてないって!」
「ほんまかぁ?」
私からは避けてない。
それを言うんだったらあんたでしょ!
絡んで来なくなったのは。
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