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死線
第508話
しおりを挟む運…命…?
漠然としたその言葉の意味を、どう拾い上げれば良いのだろう。
わからない。
いや、理解できる単語もある。
でもそれがなんだ…?
彼が言ってることは、自分とは関係のない世界の、絵空事のようにも思える。
だってイメージできないんだもん。
永遠とか世界とか、そんなことを言われても。
…ま、今更って感じでもあるけど。
「運命が無くなって、なんか困ることでも?」
「さっきの話、もういっぺん考えてみ?」
「さっきの話?」
「俺たちは今こうして、確定的に存在してる。でももし、“存在してない”としたら?」
「…はあ?」
「つまり、こういうことや。楓が楔になることで、1つだけの事象は永久に失われた。「1つだけの事象」っていうのは、たった1つの確率のことを指す。昨日なにがあったか。今日なにが起こるか。明日の天気は晴れか雨か。本来は、全部が線になって繋がっていた。けど、お前がその「線」を切った。そうすることで、世界は裏と表の両方の確率を“同時に”持つことになった。コイントスをして、次の瞬間に裏か表が決まるとするやろ?そしてその決まった目が、「現実」になると。でも、そうやない。楓がネットワークに同期することで、世界は常にランダムな確率を持つことになった。この「ランダム」っていうのは、サイコロの目が常に“1にも6にもなる”という状態を指す。言い換えれば、世界は常に確定した状態を「持てない」ということにもなる。過去に存在したものが、存在しなくなるように」
…存在しなくなる?
その言葉通りの意味を辿れば、…そういうことだよね?
いやいや、ありえないでしょ。
「存在しない」って、そのままの意味でしょ?
「そうや」
自信満々の口調だ。
残念ながら、全然届いてないよ?
意味も、内容も。
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