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死線
第502話
しおりを挟む「キーちゃんに意識が無いって、どういうこと?」
「千冬は、36歳の時に亡くなったんや。俺がそのことを知ったのは、1年後のことやった」
「同じ会社におったんやろ?」
「同じって言うても、組織がデカすぎる。俺は末端の平社員みたいなもんやったし、それに、千冬はアメリカにおった」
「普段から連絡は?」
「してない。お前の葬式以来、会ってない」
そうだ、そう言えば、亮平がいた世界線では、私は死んでるんだ。
トラックに轢かれた。
自分で言ってて違和感しかない。
心の奥ではまだ信じられずにいる。
何もかも、嘘だったんじゃないか?って。
「…なんで」
それ以上のことを言えなかった。
どうしてキーちゃんと会ってないのか。
未来でどんな時間を過ごしていたか。
キーちゃんの記憶の中で、2人は一緒だった。
同じ目標に向かって走っていた。
だから信じられないんだ。
話を聞く限り、漠然としてる2人の関係が。
「そもそも、なんでそれを最初に言わんかったん?」
「…最初?」
「私があんたと最初に会った時、…ややこしい言い方やけど、私が最初にタイムリープした時、今と全然違うことを言ってた」
「…例えば?」
「正確なことは覚えとらんけど、私のことを救いに来たって言うて、実は他に目的があるとか言い出して…。あんたは「自分」を使って、世界を元に戻すって言ってた。元々あった世界を取り戻し、自分が事故に遭った世界線に直す。でも今の話やと、全然そんなふうには聞こえんけど?」
「…それは」
自分を犠牲にして、あるべき世界を取り戻す。
ふざけんなって思ったんだ。
自分の命をなんだと思ってんだ?
まあ、その時私も色々思うことがあったから、感情的にはなってしまったけど。
キーちゃんに会って、
クロノクロスネットワークの開発を中止して——、
そう言ってたことはちゃんと覚えてる。
でも内容が全然違う。
目の前にいる「亮平」は、私を「救い出したい」と言う。
世界を元に戻すとかじゃなく、「楔?」になった私を助けたいと。
その意味がいまいちわからないし、あの時はそんなこと教えてくれなかった。
なんで?
「さっき言うたやろ…?信じてない部分もあったって。お前がまさか本当にそんな存在だとは思わなかったし、初期の世界があることも、「世界の楔」についても、確証が持てなかった。せやから、きっと、話が違ったんやないか?」
「…うーん?あんたが、「元の世界に戻す」って言ってたことは?」
「…」
バツの悪そうな顔をする。
昔から、嘘をつくのが苦手だ。
体に染み付いた癖が変わってない。
嘘をつく時、一瞬口を手で隠す仕草をする。
視線は逸れ、瞬きの回数が多くなる。
お見通しなんだ。
私には。
それが「嘘」なのかどうかはわからないけど、何か隠してることがあるんだと思った。
動揺が、目に見えて伝わってきたから。
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