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1秒後の昨日、1秒前の明日
第471話
しおりを挟む「なんやその目は」
「…別に」
「信じられんかもしれんけど、お前は今よりもずっと「過去」の世界にいた」
「…過去?」
「俺も信じんかった。っていうか、信じられんかった。楓が「別の世界」にいるなんて」
「その、別の世界っていうのはなんなん?」
「タイムリープしてるって教えてくれたやろ?色んな世界、時間に移動する。その“特性”は、世界を救う鍵やった」
「世界を、…救う…?」
「確率の内側に行けるお前だけが、世界を保存するための足掛かりになった。…それで、お前は自分の意思で、プロジェクトに参加することを決意したんや」
「その「プロジェクト」っていうのはなんやねん」
「クロノクロスネットワークと、同期すること。お前の脳とコンピュータとを繋ぎ、世界に「楔」を打つ」
「…いや、意味わからんのやけど」
「俺も正直、よくわからん。でも頼まれたんや。千冬に。楓を救ってほしい、と」
…キー…ちゃん?
……
………どういうことだ?
…なんでキーちゃんの名前が出てくる?
私を救う…?
って、どういう意味??
「どゆこと??」
「未来で、千冬はあることを知った。世界の楔になったお前が、永遠に死ぬことも許されないまま、「時間」の中に彷徨うことになると。せやから、お前を救う方法を考えたんや。「親友」やったからな。救いたいという気持ちに理由はなかった。そして俺も、それに同意した。過去に戻ってきたのは、お前を見つけるためや」
「…いやいや、待って待って、あんたは私を救いたいとかなんとか…、って、言ってなかった?」
「そうやけど」
「いや、そうやなくて、私が事故に遭ったのは自分のせいやから、その「出来事」を変えたい。そう言ってたんやけど?」
「…ああ、それはそれで間違ってないで?ただ、本当の目的は「別」にある」
「ほう…?」
「お前を見つけて、クロノクロスネットワークとの同期を切断する。そのために…」
なんのために過去に戻ってきたか。
どうして私を救いたいと言ったのか。
そのことを改めて私に言いながら、その視線はずっと固く、遠くを見据えるような実直さを満たしていた。
ここまでの彼が真剣じゃなかったわけじゃない。
でも、さっきよりもずっと、目の奥が力強かった。
いつになく真面目な声色で、いつになく強張った声量で、何か、確かなことを言おうとしていた。
そこに、言葉らしい言葉の装飾は、まだ、無くて。
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