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明日への道
第418話
しおりを挟む私たちはそのまま海で別れた。
いつまで自分がキーちゃんの中に入っているのかわからない。
ただ、中にいる間に「返事をしなきゃ」とは思った。
約束を交わしたとはいえ、それは単なる言葉であり、ぶっちゃけた話、なにかの役に立つとは思えない。
大事なのは、キーちゃんの気持ちを伝えることだ。
だから大会が終わったら、伝えようと思った。
今はそれぐらいしか思いつかないけど、タイミングとしてはきっとその方がいい。
下手なことはしたくなかった。
できるだけキーちゃんの等身大で、彼に言わなきゃ。
洗濯機に服を投げ入れ、脱ぐもの脱いでシャワーを浴びた。
こうしてキーちゃんの体に入っていると、時々わけがわからなくなる。
シャンプーを手に取った手のひらは誰のもの?
足の指先に感じる感触は?
入り混じる記憶。
混同する2つの感覚。
鏡の前でキーちゃんを見てた。
濡れた髪のそばで、ドライヤーの乾いた音。
このままこっちに帰ってくればいいのに。
今戻ってくれば、もう一度あの「夏」に戻れる。
亮平に会えるんだ。
私が代理にならなくて済むし…
呼びかけても、返事はない。
…そういえば、キーちゃんもあの後、シャワーを浴びたんだっけ?
起こったことが現実には思えなくて、真剣な彼のトーンが、鼓膜の中に響き続けていた。
シャワーで全部洗い流そうとしてた。
水の音。
窓に差し込む日差しの匂い。
ハンドルを全開に回した。
シャーーーーと、流れてくる水の勢いに任せて、全身を洗った。
キーちゃんにとって、誰かに告白されたのは、亮平が初めてだった。
面と向かって「好き」なんて、生まれて初めての出来事だった。
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