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明日への道

第409話

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 「別にええやん。続けても」

 「納得できん」

 「なんで??」

 「いや別に続ければええと思うけど、野球のどこが好きなんかなと思って」

 「…」


 亮平なりに色々思うことはあると思う。

 わざわざ聞かなくても、キーちゃんの球を打ちたいっていうことが、彼なりの答えだ。


 「千冬こそなんで野球始めたんや?」

 「…私?」

 「おう」


 …そりゃ、きっとキーちゃんならこう言うだろう。

 誰よりも速い球を投げる。

 あんたなら知ってるでしょ?


 「俺だって同じや」

 「なにが?」

 「一番速い球を投げるやつから、ホームランを打ちたい」

 「…打てるやん」

 「まだお前から打った覚えはないで?」


 …そんなことはない。

 あんたはもう充分、キーちゃんの球を打てるバッターだ。

 キーちゃんだって、もう“いちばん速い球を投げるピッチャー“じゃない。

 昔とは違うんだ。

 高校生にもなると、いやでも差がついてしまう。

 中3がピークだった。

 逆に亮平は、そこからすごいバッターに成長していった。


 「俺が言いたいのは、そういうことやなくて…」

 「なら、どういうこと?」

 「…まだ、イメージができんのや」

 「イメージ?」

 「とんでもないストレートを投げてた、昔の千冬の球を打てるイメージ」

 「…」

 「俺はまだまだっていうことや。いつか、そのイメージを越えたい。本当の意味で、お前に勝ちたい」


 わかるようで、わからない。

 そんなの気持ち次第なんじゃないの?

 実際に今のあんたになら打てるはず。

 野球のルールに則って、サシの勝負をしたら、きっとあんたが勝つ。

 キーちゃんだって、迷わずそう思うだろう。

 全国の猛者たちからホームランを打てるようなヤツなのに、私が勝てるわけない、って。


 「打つっていうのは、そういうことやない」

 「じゃ、どういうこと?」

 「…なんて言えばええやろな。なんか、昔のお前なら、「今日」の向こう側に行けるんやないかと思ってな」

 「今日の、…向こう側?」

 「昔のお前のことを思えば、周りのピッチャーなんて全然遅い。お前のことを追いかけてたら、甲子園で勝てるイメージが湧いてくる。…そんな感じ」
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