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キミがいる街

第389話

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 タイムクラッシュが起こってから、世界は「過去」の中にいる。

 タイムクラッシュ後に生まれた「私」は、“100%の時間“を持っていないらしかった。

 未来を持たない時間。

 AにもBにもなれない距離。

 存在自体がランダムで、確定した「確率」を持たない、位置。

  だから「私」は、あらゆる世界線の「私」と通信できる“不確定的な現在”であり、“時間”だった。

 複数の「自分」を、同時にリンクさせることができる。

 ドラえもんの4次元ポケットみたいに。


 なんのこっちゃって感じだけど、ようするに、Aの世界もBの世界もひっくるめて、“点として移動することができる“って意味だった。

 普通は、物事には順序がある。

 人が過去に行くためには、その人個人の「現在=未来」を持っていなきゃいけない。

 川の上を渡るには橋が必要だし、ノートの上の文字を消すためには、消しゴムがいる。

 Cの前にはBがあり、Bの前にはAがある。

 その過程を無視して、時間を移動することはできない。

 だけど私は、その壁を壊すことができるそうだった。


 ”事象の境界面を壊す”


 なんだか、トンデモ科学に聞こえなくもない。

 大体、「事象」がなにかもよくわかってない。

 わかりやすく言えば、「信号の色を変える」ことができるんだとか。

 それでも「ん??」って感じだったが、「時間に関係なく確率を操作できる」と言われ、なんとなくイメージできた。

 結果が決まったジャンケンのタイミングを、任意の位置に変えられるということを聞き。


 物事の発生には、因果関係がある。

 出来事と出来事の間には強い結びつきがあり、「確率」はある一点に必ず収束する。

 だから現実は常に一つしかないし、空の流れは、たった一方向にしか進めない。

 けど、「クロノクロスネットワーク」によって時空に穴が開けられ、世界は永遠に、一つの「事象=現在」には辿り着けなくなった。

 その「時空の歪み」の中に生まれた私は、“どんなタイミング⇄距離“でも、信号の色を変えることができるそうだった。

 仮に明日雨が降ったとしても、晴れにできる。

 そういう、「確率の壁を越えることができる存在」なんだって。
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