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少年とヒーロー
第352話
しおりを挟む「日本はきっと大丈夫やろ」
なんの確証もないその言葉の“深さ”には、奥行きの見えない土壌の柔らかさがあった。
報道によれば、小惑星は南アメリカ大陸に衝突する。
「衝突によって大域的に地震が発生する」という専門家の具体的な説明があったが、ニュースはあらゆる情報が錯綜していた。
報道の背景にあったのは、緊急避難指示に際する波及的な避難指示の発信だった。
情報を簡潔に説明できるよう、各メディアから流れる声明には余計な文章が削ぎ落とされ、事態の逼迫さを伝えるためだけに通信が終始していた。
しかしネットワーク上に分節化するあらゆる報道機関は、交錯する情報の内容を多方面から報せる目であり、口にもなっていた。
連なる言葉の羅列や小惑星に対する報道の形容は、肥大化する様々な情報の海となっていた。
正確な情報が飛び交う一方で、加速する報道の熱は、人々の動揺を誘う波風にもなった。
“これからどうすればいいか“
報道に対して抱いた感情の多くは、見通せない未来に対しての困惑がほとんどだった。
それはより正確には、出来事や現実に対しての直接的な困惑というより、危機的な災害を伝える情報伝達が、出来事の“前”に伝えられていたことだった。
地震や台風などの自然災害の多くは、科学的な進歩によって事前にそれを検知し、迅速に伝達できる通信ネットワークが、量子インターネット上に於いて普及していた。
2083年の人々は、コンパクトシティと呼ばれる効率的な住まいや生活機能の実現によって、自然災害に対する対応や危険検知の共有が、時間的にも空間的にもより簡易的なものに変化していた。
災害によって生じる被害の推定はビックデータによってオンライン形式でホログラム化され、発達したメディアとデバイスによってそれを共有できる技術が、通信規格の多元化によって実現、浸透していた。
情報インフラは4次元データ通信の構築によってよりダイレクトなコンピューティングが可能になっており、衛星データによる3次元空間内の情報の把握と、AI解析による時間変化の自動抽出などが、4次元(3次元+時間軸)的に可視化できる時代になっていた。
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