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少年とヒーロー
第349話
しおりを挟む2人の会話に焦りはなかった。
ただ、電話が繋がったことに対する安堵が、お互いの息遣いの中にはあった。
スピーカーから流れる電子音は、静かすぎるカフェテリア内の時間を動かすように響いていた。
サイレンのような慌ただしさはなかったが、静寂を濁すだけの切れ味があった。
目の前の時間は閑散としていた。
ひっそりとしていて、その深さには隙がない。
寂しささえ漂うようだった。
コンマ数秒の髄にまで、物音のなさが滲むほど。
キーちゃんは30の時に結婚し、子供を3人儲けていた。
弘樹と洸平と、翔太。
全員男だった。
長男の弘樹と次男の洸平は年子で、6つも違う。
三人の中で一番結婚が遅かったのが、洸平だった。
36の時に結婚し、その2年後にサツキが生まれた。
キーちゃんの孫の中で、サツキが一番小さい。
長男の孫は30手前で、子供もいた。
ひ孫を合わせると、家族は全員で20人にもなる。
それぞれがそれぞれの生活を送っていた。
三男の翔太は婿に行き、京都市の東山に移り住んでいた。
今から京都東ICに乗って、神戸まで来るという連絡が入っていた。
弘樹はもう家を出たそうだった。
ひとまず大学に来るようにと、3人には伝えていた。
家に戻ることも考えたが、どのような被害になるかの見通しが全く立てなかったため、大学に留まることを決めた。
家族全員と合流したのは日付が変わった夜中の2時ごろだった。
構内北側のマルチメディアセンターに場所を移し、2階の和室を貸し出してもらえるように話を通した上で、しばらくそこに滞在することになった。
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