雨上がりに僕らは駆けていく Part1

少年とヒーロー

第３４２話

　バスでポートアイランドに向かったのは、とにかくそこが安全だと考えたからだった。

　大学に行けば、必要なものが全てある。

　出発前に知人に連絡していた。

　キーちゃんは高校を卒業後、情報学の専攻で地元の大学に進学していた。

　父親の研究に関わりを持ったのは23歳の時だ。

　その頃から、神戸学院大学内の研究室に、身を置くようになった。

　のちの、『クロノプロジェクト』にも、研究員の一人としてキーちゃんは携わっていた。


　バスを降り、大学内の知人の元を訪ねた。

　本館の一階にあるがらんどうのカフェテラスに電気をつけ、研究室から慌てて降りてきたのは、生命科学研究科准教授の岩崎亨いわさきとおるだった。

　本館には他にも何人かのスタッフがいたが、カフェテラスに降りてきたのは彼と、実習生の二人だけだった。