雨上がりに僕らは駆けていく Part1

第一次タイムクラッシュ

第２７５話

　この「試み」の根底にあったものは、人間の脳の中に保存されている情報が、「１つの情報系」として時間的な制約を伴わないシステムファイル上に、半永久的にその状態(量子情報)を保存することが可能であるか？という「生命情報単位の量子化＝デジタル化」に向けての機械的な取り組みだった。

　「情報」は不変か？

　「情報」が伝播する位置と運動は、時間の経過に於ける物質的な状態の劣化を伴わないか？

　また、情報と時間は１つの場に対して統合的に<連結＝結合>することはできるのか？

　それらの考えを形にする上で重要なことは、


　『人間という有機的なエネルギー体の《寿命＝範囲》の単位を4次元的に引き伸ばせるか』


　という点であり、１つの情報系としての生と死の区分点を、人間の「肉体」と「精神」の2次元面的境界上に局所的に分散して考えられるか、あるいはその部分的な構成を空間ごとに分けて考えられるかに際するトポロジー(位相幾何学)的な要請だった。


　つまり、時間の経過に伴う物理的な情報の変化が、１つの場に対して永続的な連続量を持っているか、または空間の広がりに伴う持続的なエントロピーの増大率が、常にランダムな値を部分的に連続⇄連動しつつ、「A」という事象と「B」という事象の区分点を継続的に設けているか？という「情報の境界」について、「人間」という情報系が「物質」の外側に立てるかどうかの部分を、デジタル的に再解釈＝再構築できるかを対象にしている。

　この意味でもっとも重大なことは、「生」には「形」があり、また「形」には、「時間」が伴わなければならないのか？

　という点であった。