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【第4章】アナザーワールド

第220話

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 目が覚めた私は、見慣れないベットの上にいた。


 …どこだ、ここ


 頭痛がする頭の中で、ぐしゃぐしゃになった感情を抑えようと必死になる。

 自分がタイムリープしていることは、なんとなくわかった。

 問題は“今”が「いつ」かということだったが、ぶっちゃけ、そんなことはどうでもいい。

 銃で撃たれた亮平の姿や、キーちゃんの姿をした“誰か“。

 記憶の中にある残像が、ありありと視界の中に残っていた。

 

 なにが…どうなってる…


 そのことで頭がいっぱいで、収拾がつかない。

 シーツをはぐり、部屋の中を見渡した。



 八畳くらいの部屋。

 簡易的な勉強机に、風変わりなポスター。

 モノトーンで統一された内装は、白が基調になっている。

 殺風景と言えば殺風景で、見たところ、「誰かの部屋」って感じだった。



 ドアを開けて、辺りを見る。

 誰もいない。

 ドアを開けた先は通路で、すぐ目の前に階段があった。

 どうやら、ここは2階らしい。

 他にも部屋がいくつかあった。

 誰かの家なんだろうか?



 トントントントンッ…



 階段を降りる途中で、聞き慣れた音が聞こえてきた。

 キッチンからだった。



 ガチャッ



 一階に降り、中央フロアの向かい側にあるドアを開けると、そこはリビングだった。

 リビング横のキッチン内で、野菜を切っているお母さんがいた。


 …でも、

 …なんで?



 「おはよう」


 今何時かはわからなかったが、なんとなくそう言った。


 「…あ、起きたんか!日曜日やからって寝すぎよ」


 …日曜日。


 で、…何年の?


 カレンダーを見ると、2014年9月とあった。



 …2014年


 …9月



 日付は、11日




 …………11日!?



 その数字にハッとなったのは、当然と言えば当然だった。


 急いで尋ねた。



 「母さん!亮平って、今どこにおる!?」


 事故に遭った日


 それだけは常に、頭の中にあった。


 忘れるはずはなかった。


 混乱する出来事が次々に起きても、焼きついたように離れない記憶。



 母さんは、首を傾げた。



 「…亮平?」

 「亮平って言ったら亮平やろ!?まさか、事故に遭ったりしてないよな!?」


 言葉は返ってこなかった。

 それどころか、何言ってんのって言われた。


 「…何言ってんの…って」


 スマホを開く。

 …でも、パスコードが違った。


 「ねぇ、私のパスコード知らん?!」

 「知るわけないやろ」


 母さんのスマホを借りた。

 借りたはいいが、亮平の番号がわからなかった。

 そこで、搬送された病院にかけることにした。

 …確か、明石市立市民病院…、…だったよね?



 prrrrrrr


 「はい、もしもし、明石市立病院です」

 「…あの、すいません、昨日バイクの交通事故で、…緊急搬送された木崎亮平っていう高校生がいたと思うんですが…」

 「…昨日、ですか?」

 「…はい。今そちらに入院されてますか?」

 「少々お待ち下さいね」


 保留音が鳴り、5分ほど待った。


 「すいません、お待たせいたしました。ただいまの件なんですけれども、昨日緊急搬送された患者様の中で、そのような方はいらっしゃいませんが…」


 電話先のスタッフは、そう言った。

 そうですかと謝り、自分の間違いだと言うことを伝えた。


 「…なに、今の?」

 「…え?」

 「なんで病院にかけたん?」


 困惑している母親。



 …いや、えっと。
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