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第216話
しおりを挟む走って向かった先の公園内で、2人は相対していた。
亮平に向かって、銃を構えているキーちゃん。
それを見上げている亮平。
2人は公園中央の、大きな欅の真下にいた。
今にも発砲されそうな、銃の切っ先。
太い欅の幹にもたれ掛かるように、亮平は地面に座り込んでいた。
左手はお腹を押さえていて、シャツの上から血が滲み出ている。
…そんな
…まさか
キーちゃんはこっちを見てきた。
「…久しぶりやな」
そう言いながら、やっぱり、表情が冷たい。
…うまく、言葉を出せない。
知らない人と相対した時のような、距離の遠さ。
近づけなかった。
感じたこともないような気配が、彼女の周りを取り巻いていたからだ。
「アンタ、「未来」を見たの?」
「…え?」
「アタシがコイツの家に行くって、知ってたんやろ?」
どこまでも冷たいトーンで、そう話す。
未来を見たか
その「セリフ」は、2022年の世界のキーちゃんが言っていたことと、少しだけ似ていた。
あの時…、キーちゃんがなんて言っていたか、ハッキリとは思い出せない。
だけど「彼女」は、未来から来たと言っていた。
——遠い、未来から。
「楓ッ!コイツの言うことに耳を貸すなッ!」
亮平は顔を歪めながら、そう叫んだ。
立ち上がれないみたいだった。
「亮平に何を言われたんか知らんけど、騙されとるのはアンタやで?楓」
「…騙されてる?」
「コイツは、お前を利用しようとしとるだけや」
…何を…、言って…
「…ええか、楓…、コイツはお前の知ってる“千冬”やない…!耳を貸すな…!」
2人が、何を言ってるのかがわからない。
私の知ってる「キーちゃん」じゃないって、…何?
「…逃げろ!楓!!」
…——パンッ!
「逃げろ」という声。
その言葉が耳に届いた先の距離に、響いた音。
銃から放たれた、——音。
目の前で、亮平が撃たれた
力なくダラリと落ちていく手。
私は、声が出なかった
頭の中が真っ白になった
なにもかも、わけがわからなくなった
「なにを言われたのかは知らんが、アンタはすでに“目覚めとる”ようやな。アンタが“能力”を使う前に、忠告しておく。亮平は味方なんかやない。自分の陰謀に、アンタを「利用」しようとしとるだけや。未来でなにが起きているか、アンタが一体「何者」か、近いうちに知ることになるやろ。アタシたちは元々、出会うべきやなかった。…大坂楓という「人間」は、元々存在するべきやなかった」
なにを言われているのか、よくわからない…
声だけが、頭の中に響いた。
内容は入ってこなかった。
難しかったからじゃない。
状況が、…目の前で起きていることが、受け入れられなかったからだ。
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