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第203話

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 「…事故を、…回避した………?」

 「そう!それで、…あんたが事故に遭って…」


 とにかく、思い浮かぶことを全部説明した。

 9月9日に自分が戻って、次の日の朝に、あの交差点に行った。

 その後に起こった出来事や、キーちゃんと話したこと。


 一通り説明した後に、未来に行ったことも話した。

 2022年。

 亮平は、黙って聞いていた。


 「…待て待て、タイムリープしたって?」

 「そうやって言うとるやろ!」

 「…いや、あり得ん。この前言うたやろ。“物質そのものを移動させるタイムリープは不可能”やって。それに、「未来に行く」なんて言うのは、科学的にも物理的にも不可能や」

 「…いやでも、実際に移動したんやって!!」

 「ええか。クロノ・クロスで介入できるんは「時間」やない。あくまで個人間に於ける「保存された情報領域」や。人間の脳の中に保存されている情報ストレージ領域を利用して、あたかも“過去に移動しているように思える”だけや。情報が行き来しとるだけで、実際には「時間旅行」ができとるわけやない…。…いや、まあ、正確に言えば…」

 「…難しい話はどうでもええねん!とにかく、私のせいで未来が変わったんや…!アンタが事故に遭うって言うのは、私が事故に遭わなかった世界線やろ!?」

 「…いや、まあ、そうやけど。そんな単純な問題やなくてやな…」

 「私のせいで…、事故が起きた。どうすればええん!?…どうすれば」

 「落ち着け。何を経験したんか知らんが、少なくともその「世界線」は、元々あった世界や」

 「…元々?」

 「お前のせいで起こった「事故」やないってことや。…むしろ、俺のせいで、楓が事故に遭う「時間」が、…世界が生まれてしまった。やから今、こうしてここに来とるわけやし…」

 「…あーもうわからん…。なにがどうなっとんかが」


 亮平の言葉は、相変わらず理解が難しい。

 何を言ってるのかわからないわけじゃないけど、ややこしさの塊みたいな感じで、困惑するしかなかった。

 …ただ、ぶっちゃけ、そんな話はどうでも良かった。

 世界がどうとか、タイムリープがどうとか、そんなことよりも、亮平が事故に遭った。

 その「現実」を目の当たりにしてしまったことが、…怖かった。

 …だって、目の前であんなことになって、…もう目を覚まさないかもって、何度も考えたんだ。

 元々の世界とか、誰かのせいで生まれた世界とか、…そんなややこしいことは正直、今は考えたくない。

 
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