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空と海と、トンネルの向こう
第195話
しおりを挟む「時間に…、穴…?」
「意味はわからんで?でも言うとったんや。「俺は過去に過ちを犯した」って。そのせいで、「未来が変わってしまった」って。2083年に起こることは、「俺が引き起こしたこと」やって…」
「…2083年に、なにが起きるん?」
「…」
キーちゃんは言葉を噤んだ。
バツが悪そうな顔をして、無言でまたノートのページをめくり始めた。
「言ったってどうせ信じん」
ため息混じりに、言葉を吐くのを躊躇っていた。
「…信じるで?」
「…うーん。信じるとか信じないとかって言うよりも、アホみたい話やからな…」
なにがあったのか、すごく気になった。
2083年って言うと、50年後の未来から来たって言う亮平よりも、先の未来だ。
そんな遠い未来のことなんて想像できない。
けど、まんざら嘘のようにも思えない。
不思議とそう思えたのは、自分が体験している“不思議なこと”と、決して無関係じゃないって、思えたからだ。
「隕石が落ちてきたらしい」
「…………?」
「…せやから、隕石。大きな、——本当に大きな隕石やったらしい」
沈黙する私を横目に、キーちゃんは続けた。
「その「巨大隕石」は、未来の世界で、『シエンフエゴス小惑星』と名付けられたらしい。親父が言うには、この隕石の衝突は「時間改変」に於けるエラー、——つまり“元々の世界にはなかったイレギュラーな出来事“だったそうや。アタシはそれを信じんかった。言っとる意味もわからんかったし、そもそも「時間改変」ってなんやねん…って感じやったしな」
予想にもなかった言葉。
シエンフエゴス小惑星?
時間改変…?
必死に追いつこうとするが、うまくイメージができない。
その様子を察してくれたのか、「真に受けんなよ」って、話の途中でフォローしてくれた。
…真に受けるもなにも、まだ、否定も肯定もできないような内容に、頭を抱えるしかなかった。
「親父は昔から変人やった。楓の前やと、ただの気さくなおじさんに見えたかもしれんが、アタシは親父のことが嫌いや。…嫌いって言うか、苦手って言うか…。いつも切羽詰まったような顔をして、独り言ばかりほざいて、挙句、アメリカに渡米して、家族は放ったらかしや。そりゃ母さんも愛想尽かすわって感じ。アタシがアメリカに行ったんは、親父を説得するためやった。ま、他にも理由はあったんやけど。わけわからん研究に時間を費やす前に、まずは家族との時間を大切にして欲しかった。母さんとヨリを戻して欲しかった。…失敗に終わったけどな」
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