雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

文字の大きさ
上 下
189 / 698
空と海と、トンネルの向こう

第188話

しおりを挟む

 この13号館は、キーちゃんの父親が設計したらしい。

 設計したと言うか、国に要望したらしいんだ。

 日本ではすごく有名な科学者みたいで、“ある研究”のためにこのポートランドを拠点にしていたみたいだけど、研究に必要な機材とか、人材とか、設備の設立を、国が主体になって実施していたみたいだった。

 『桐崎雄一朗』。

 キーちゃんの父親は、海外でもすごく評判の高い生物科学者だ。

 日本のダーウィンと呼ばれているらしい。

 専門にしている分野はヒトゲノムとかなんとか。

 それから、「脳」。

 13号館は別名『国際バイオテクノロジーセンター』と呼ばれていた。

 人間の生物学的な研究の最先端施設として、ポートランドが誇る名所だったからだ。



 大きな正面玄関を越え、吹き抜けのメインホールに来た。

 5階くらいの高さまで突き抜けた天井。

 洗練されたデザインのフロア。

 超高級ホテルに来たかのような空間だ。

 ホテルよりも少し病院に近い機能的な色調と設備に溢れているけど、フロアの中央に設置された背の高いエスカレーターは、吹き抜けの広々とした空間に相まって、街のど真ん中にある商業施設のような“アクティビティ“さえ演出している。

 もちろん利便性を追求した結果なんだろうけど、各階のフロアがガラスの塀越しに見渡せるメインホールは、公共施設とは思えないほどに遊び心が満載だ。

 一階にはカフェとパン屋、それから巨大なモニターがついた休憩室だってある。

 関西空港の待合室のような広々としたその空間は、海を一望できるテラス席だって完備されていた。

 その真向かいにある渡り廊下を伝っていけば、温泉に入れる施設も。

 なんでもここは、大学関連の人だけじゃなく、研究に携わる多くの人や、ポートランドの事業開拓に携わる多くの専門の人たちが行き来する場所でもあったので、自然の成り行き的にそうなったらしい。

 このビルの2階から4階には、某有名会社の本社だって入居している。

 全部、キーちゃんの父親が誘致したらしい。

 どんな大物だよ…って、昔は思った。

 今もそうだけど、実際に会ってみると、どこにでもいるおじさんって感じ…かな。

 気さくで、誰でも優しくて、ちょっとだけ小難しそうな感じっていうか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女 彼女は、遠い未来から来たと言った。 「甲子園に行くで」 そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな? グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。 ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。 しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。

処理中です...