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空と海と、トンネルの向こう

第184話

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 キーちゃんに聞いてみた。


 「もしかして、今から行くの大学!?」


 後ろ髪を靡かせながら、キーちゃんは振り向いた。


 「あ?」

 「やから、秘密基地って、「ガリレオ」のこと!?」


 キーちゃんが言う「秘密基地」っていうのを、子供の頃に聞いたことはなかった。

 だからてっきりあの天文台のことを指しているのかと思った。


 「ちゃうちゃう!でも、大学に行くのは合ってるで」


 なるほど、大学には行くのか…

 そうこうしているうちにハーバーランド線に乗り、ポートタワーが見えた。

 入り組んだ道を越え、大通りに面した道沿いを進み、浜手幹線筋のビル群を抜けていく。

 ガラス張りの高層ビルや、モダン風な古い石造りの銀行。

 背の高いホテルに、テレビ局。

 『みなとのもり公園(神戸震災復興記念公園)』

 を目印に、信号を右折する。


 あとはまっすぐだった。

 しばらくすると、緩い坂道が見え、側道を突っ走っていると、赤い橋が見える。

 「神戸大橋」

 だ。



 「今日は風が強いな」


 橋の横にある自転車道を渡り、神戸大橋に入ると、私が好きな景色が目に入る。

 左手に見える赤いモノレール用の橋と、車道用の赤い橋に挟まれ、眼下に海を眺めることができる道。

 橋と橋の間から見える空は、赤い橋とのコントラストでより青く見える。

 まるで、空と海とを繋いでいる通り道であるかのように、不思議な浮遊感に襲われるんだ。

 前方から来る風と、橋の間に吹く、海の匂い。

 まるで重力を奪われたかのように、空中に浮いているような感覚が、橋の上を走っている時にだけ訪れる。

 しばらく坂道だから、キーちゃんは大変だと思うんだけど、後ろに乗っている私は、いつも心地良かった。

 時間の流れが変わる、っていうのかな?

 前方に見えるポートランドの景色と、海に浮かぶ船の往来、——神戸湾を跨ぐ「風」。

 この場所を通るときは、いつも空を見上げたくなる。

 それこそ、キーちゃんが言っているように、どこか別の世界に行けそうな、そんな予感がするんだ。

 長い橋を抜けた後に見える、ポートランドの ” BE KOBE ” のモニュメント。

 大学はそのモニュメントのすぐそばにあった。

 神戸市街地を一望できる、海岸線沿いだ。
 
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