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【第3章】青い土地
第145話
しおりを挟むピンポーン、ピンポーン…
家に着くなり、速攻でベルを押した。
「亮平!」って直接呼ぼうとしたが、ベルの方が手っ取り早い。
すると、キッチンの勝手口のドアが開いた。
ヌッと現れたその「人」は、“私が知っている亮平”だった。
…奇妙な言い方かもしれないけれど。
「…なんや、お前らか」
金髪、目の下のクマ、両耳のピアス、ダボダボなワイドパンツ。
一目見て、「亮平」だとわかった。
もちろん、あんまり良い意味じゃない。
「よ!」
ドア越しにダルそうな顔を見せる亮平に対し、キーちゃんは右手でジェスチャーしながら華麗な挨拶を交わした。
私の方は思わず挨拶をしそびれてしまった。
オバケを見てしまった時のように、固まってしまった。
「なにしに来たん?」
目つきの悪い目の前の彼は、フラッシュバックしたように私の頭の中の「時間」を巻き戻した。
亮平と最後に会話した日を思い出した。
その「最後」っていうのは、もちろん未来から来たっていう「亮平」のことじゃない。
「…えっと」
うまく喋れないでいる私の後ろで、キーちゃんが「家入ってもええ?」と言った。
亮平は「別にいいけど」と答え、私たちは中に入った。
「それで、なに?」
キッチンのカウンターテーブル前に設置されている丸椅子に腰掛け、聞いてきた。
聞きたいことはひとつだった。
でも、それを単刀直入に聞けるほど、和やかな雰囲気じゃなかった。
亮平の口数は少ないし、何より、声のトーンが暗い。
学校に来なくなってから、誰に対しても攻撃的だった。
なにも信用していないというか、心を閉ざしているというか…
最後に会った日もそうだった。
バイクに乗る亮平を海岸沿いの道で見かけた時だった。
部活帰りの私を見つけ、声をかけてきた彼に、言ったんだ。
「どこに行くん?」
って。
亮平は、「さあな」って、夜の街の中に消えていった。
もう、同じように学校には行けないのかなって、その時に思った。
…それほど、甲高いエンジン音は彼の背中を遠くさせた。
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