120 / 698
未来の記憶
第119話
しおりを挟む「楓?」
「か、母さん?!母さんよな??」
「…え、そうやけど?」
「…はぁ、よかった」
予期しないことが次々に起きて、どうすればいいのかもわからなくなる。
だから、母さんの声を聞いて安心した。
「どうしたん?」
「…え?…あ、えっと」
そのうちに電話は切れた。
だけど、すぐにスマホにかかってきた。
着信があるときは、スマホはパスコードがなくても応答ができる。
しめた!
と思い、画面をタッチする。
「も、もしもし!?」
「…なんや、今いたずら電話がかかってきたんやけど?」
「いたずらやない!私や!」
「…なんや、騒々しいなぁ。ほんまにアンタか?」
「そうや!私や!」
「ほんまに?…新手のオレオレ詐欺やないやろな?」
「ちゃうちゃう…!この声に聞き覚えあるやろ!?」
「…うーん、なんとも言えんけど。…てか、なんで公衆電話からかけてきたん?」
「…パスコード忘れたんや」
「は?バカなん?」
「うっさい…。スマホ開かんくて、困ってたんや」
「亮君はそこにおらんのん?」
「亮君…?あー、仕事に行った…」
「…ドコモショップに行きんさいや」
「いや行くけど、今はそれどころやなくてやな…」
母さんに、なんて言えばいいだろう?
そればかりが頭をよぎった。
自分がタイムリープしていること、亮平との結婚、知らない「世界」。
そんな異常事態を「声」に出しても、絶対にわかってくれないだろう。
…わかってくれないというか、どう説明していいかもわからない。
とりあえずしゃべらないと…
「記憶が、…ないんや」
「…はぁ!?」
スピーカー越しに聞こえてきた。
あからさまに困惑している様子が。
かと言って、…もう遅い。
話し続けなきゃいけないと思った。
「…その、バカなこと言ってるのはわかるよ?でも、ほんとなんやって」
「…ほんとって、…どういうこと??もう一回言うて?」
「せやから、記憶が無くなった!!」
沈黙が流れた。
唖然としている、——そんなところだろうか?
静止した時間のそばで、母さんは不思議そうに声を漏らした。
「…なに言うてるん?」
「…えっ………と」
そのあと会話がうまく噛み合わなかったのは、想像に難くない。
母さんに説明するのに、1時間はかかった。
ぶっちゃけ、説明できたかどうかと言われれば、100%説明できてない。
でも、…「記憶がなくなった」という話は、一応理解してくれた…とは思う。
色々話を進める中で、思いつく限りのことを話した。
どっから記憶がないかとか、学校のこととか、亮平との馴れ初めとか。
今家族はどうしているのか、…とか、そんなことも含めて。
その過程で、母さんから色々聞いた。
この「世界」のこと。
「過去」のことを。
その「話」は、まるでおとぎ話みたいだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
王太子様、丁寧にお断りします!
abang
恋愛
「……美しいご令嬢、名前を聞いても?」
王太子であり、容姿にも恵まれた。
国中の女性にはモテたし、勿論男にも好かれている。
そんな王太子が出会った絶世の美女は少し変……?
「申し訳ありません、先程落としてしまって」
((んな訳あるかぁーーー!!!))
「あはは、面白い冗談だね。俺の事を知ってる?」
「はい、多分王太子殿下ではないかと……」
「……うん、あたりだね」
「じゃあ、落とし物を探して参りますので……さようなら」
「え"っ!?無礼とか、王太子殿下だ、とか考えない?」
「ワーオウタイシサマダ、ステキ……では失礼致します」
「……決めた、俺は彼女を妻にする」
「お断りします」
ちょっと天然なナルシ王太子×塩対応公爵令嬢
「私は平和で落ち着いた愛を育みたいので」
「俺は、キミと愛を育みたいよ」
「却下!」
悪役令嬢なので婚約回避したつもりが何故か私との婚約をお望みたいです
もふきゅな
恋愛
悪役令嬢として転生した主人公は、王太子との婚約を回避するため、幼少期から距離を置こうと決意。しかし、王太子はなぜか彼女に強引に迫り、逃げても追いかけてくる。絶対に婚約しないと誓う彼女だが、王太子が他の女性と結婚しないと宣言し、ますます追い詰められていく。だが、彼女が新たに心を寄せる相手が現れると、王太子は嫉妬し始め、その関係はさらに複雑化する。果たして、彼女は運命を変え、真実の愛を手に入れることができるのか?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる