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星の降る夜

第99話

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 「ってか、2人は信じとん?」

 「なにを?」

 「亮平の話」

 「…んー、いや」

 「そうよな。私も信じてない」


 亮平は私を見てムッとした。

 なんでお前まで、と言わんばかりに。

 でも、そんな顔をしてもダメだ。

 さっき私をおちょくってきたじゃないか。

 そのお返しだ。


 「まあ、信じられんとは思うけど」

 「未来から来たって言うんなら、どんな時代からやってきたの?」


 アキラは尋ねた。


 「遠い未来」

 「…アバウトだね。50年後なんでしょ?」

 「楓に聞いたんか…」

 「うん。50年って、すごい遠いね」

 「そうやな」

 「どんな世界だったの?」

 「どんな世界…、うーん」


 確かに、それは私も気になる。

 50年という途方もない時間の先。

 …そんなの、想像できないけど。


 「ガソリン車はもうほぼ走っとらんかったな」

 「車が、ってこと?」

 「いや車はあるけど、ほとんどが電気自動車やった」

 「ほえー」

 「再生可能エネルギーとか、デジタル経済圏とか、行政サービスの効率化、多様なコミュニティの共存、ライフサイエンスの進歩…」

 「…ちょちょちょ、なんてなんて??」

 「ハハッ。お前らにはちょっと難しいやろ(笑)でもぶっちゃけ、俺がいた時代なんて、今の時代とさほど変わらん。便利になって暮らしが豊かになっても、相変わらず電気も使わん村とか集落もあったりするし」

 「どんな生活送ってたん?」

 「俺?」

 「うん」

 「あー…そうやな、生涯独身、的な!?」

 「…プッ」

 「なに笑っとんねん」

 「…え(笑)なんかちょっと、想像できちゃったから」


 『生涯独身』という言葉を聞いて、65歳のヨボヨボになった亮平の姿を想像した。

 白髪が生えて、目つきが悪く、年金生活をスタートさせたばかりの姿を。


 「まさか、65年間も彼女がおらんかったの??」

 「そんなわけないやろ!彼女くらいおったわ」

 「へぇぇぇ。どんな人やったん?」

 「どんな人でもええやろ、別に」

 「私気になります」

 「まあ、お前よりは美人やったで」

 「は!?」

 「どんなタイプの子やったん?」

 「どんなタイプ…、そうやなぁ…、すぐにプロレス技をかけようとする」

 「プロレス技!?」

 「そう。三角絞めとか、コブラツイストとか」

 「…こわ」

 「そうやろ(笑)あまりにも暴力がひどいから、別れた。フラれたのは俺なんやけどな」

 「フラれたんかい!」

 「もうあんたとは付き合いきれんわ!って、どやされた」

 「…なにしたん」

 「もう、覚えてない。ずっと昔の話やし」

 「なにそれ、…こわ。記憶喪失?」

 「長すぎる時間を過ごすと、記憶も曖昧になってくるもんや」

 「…わかった!あんたの妄想やろ、それ」

 「ほんっと失礼なやつやな、お前は。そっちこそまだ彼氏作ったことないやん」

 「私はつくったことありますー」

 「ほー。いつ?」

 「…だから翔君」


 アキラも絢音も笑ってる。

 どっちも妄想なんじゃない?って。

 私は違うから!

 って必死になろうとしたら、じゃ、メール見せて、って言われた。


 …やばっ、と思い、咄嗟にスマホを隠す。

 ここに来て、自分がついた嘘がものすごい勢いで首を絞めてくる。


 「…やだ」

 「メール来たんでしょ?」

 「…そうやけど」

 「じゃあ見せてよ」


 余計なことは言わずに、素直に電話があっただけって言えばよかった。

 …でも待てよ、確かに翔君から電話がかかってきたけど、電話には出てない。

 ってことは、「告白された」ことにはなってない!!


 …そうか。

 あくまで「告白される可能性」の話をしてただけなのか…、私は…

 それって、要するに、妄想…ってことになるのか?


 いやいやいや!

 そんなはずはない!


 「プライバシーやけんダメ!」


 ひとまずメールは来てないので見せられない。

 かといって「告白された」という事実は、この時間軸にはまだ存在してない。

 「この時間軸には存在してない」ってなんだよ…

 自分で思っといて、違和感しか感じないんだけど。
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