雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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星の降る夜

第95話

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 午後22時を回った頃だった。

 翔君からの電話が鳴ったのは。

 付き合って、まだ3日も経っていなかったあの日、ドラえもんの「ひみつ道具登場!」の着信音が鳴って、誰かな?と思いながら画面を見た。

 思わず、聞き流していた音楽プレーヤーのスイッチを消した。


 「も、もしもし!?」


 慌てて出たその先で、声が聞こえた。

 好きで好きでたまらなかった男の子の声が。


 今でも思い出す。

 あの頃の世界が、「現実」には思えなかったこと。

 “翔君と付き合ってる”っていうパワーワードが、どれだけ、現実離れしていたか。

 どうしても信じられなかった。

 それこそ、昨日の朝に起きた出来事みたいに。


 私が、あの翔君と付き合ってる…??


 そんな非現実的な状況に、どうすればいいのかもわからなくなって…

 付き合ってると言うのに、電話での会話は終始、覚束なかった。


 「今、話できないかなと思って」


 彼はそう言って笑いながら「急にごめん」と言う。

 あんなに甘い「ごめん」を聞いたのは初めてだった。

 ごめんという日本語が、あんなにもくすぐったいものだとは思わなかった。

 なんて返せばいいのかもわからくなって、心臓はバクバクで…


 「…はぁ、懐かしいわ」

 「は?」


 あんたには関係ないよ、ばーか。

 夜中にバイクに乗ってタバコを吹かしてるやつに比べたら、翔君の完璧な見た目とスタイルは、月とスッポンぐらいに差がある。

 ほんと、見習って欲しいよ。

 真面目に勉強して、スポーツもできて、非の打ち所がない完全な生命体になれとまでは言わないけど、せめて人様には迷惑をかけない程度の人間にはなって欲しい。

 あんたくらいだよ?

 あの頃、素行の悪さで名前を覚えられていた西中の生徒は。


 「なにが懐かしいん?」

 「あー、もう、うっさい。で、その「隕石」がどうかしたん?」

 「一緒に見ようと思ってな」

 「…隕石を?」

 「正直、また必ず落ちてくる保証はないが、アキラたちを説得するにはいいアイディアやろ?」


 …見に行くって言っても、危なくない?

 怪我人は出なかったみたいだけど、結構すごい物的損害が出たってニュースで言ってたし…


 「そんな近くで見るわけないやろ」

 「ああ、ね」
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