上 下
621 / 752

621死刑

しおりを挟む
******(ブルネリ公爵)

私に対する襲撃以降、逃げ出した囚人に何も動きが無い。
結局、奴等の居場所も見つける事も出来ずに、今日が来てしまった。

「死刑が無事に終えれば良いのだが。」

今まで何も動きが無いのが逆に不気味だった。

「ブルネリ公爵、少しは落ち着いたらどうです。
 これだけの警備体制なら囚人なんて問題ないだろう。」

バラン将軍を始め各騎士団長は国王の側に付き、それぞれの騎士団が警備をしている。
しかし騎士団でも逃げ出した囚人を見つける事も出来ていない状態で、何を悠長な事を。
あれだけの人数がオーガになったとしたら、防ぎきる事は出来るのだろうか。


時間となり、処刑場へと移動する。
国王、貴族達の前で罪状が読み上げられる。
貴族としての義務でこの場に居るが、この様な見せ物は好きでは無い。

そして、処刑台へと連れて行かれようとした元貴族が叫んだ

「我々は選ばれし者だ。新たなる世界で生きるのは我々だ。
 愚かな奴等は、地獄に落ちろ。」

その時、処刑を見るために集まった民衆の中で魔法の爆発が起きた。
ある所では炎、ある所では竜巻、またある所では雷撃が

パニックになった民衆の方から処刑場に向かって攻撃魔法が放たれる。
処刑場はシールドで覆われているが、そのシールドが脆くも破られてしまった。

「一体何が起きている。」
「騎士団は敵に備えろ。囚人を逃がすな。」
「えぇい、騎士団は何をしておるんじゃ。」

貴族、騎士団の怒声と市民達の叫び声の中、処刑場に現れたのは仮面を付けた2人の男と1人の女。
その後から4、50人程が続いた。
ナターシャ達と、逃げ出した囚人だろう。
騎士団達に囲まれ対峙している中、囚人達が懐から取り出したのは例の短剣だった。

「室内へ。ここに居ては危険です。」

声を張上げ周囲に危険を促したが

「敵がどれだけ強かろうとあれだけの騎士団が居れば問題あるまい。」

貴族達は安全だと信じ込んでしまっている。
将軍と貴族には、あの短剣が人をハイオーガに変えることを伝えてあると言うのに
バラン将軍も王にこの場を離れるように進言しているが、

「所詮は平民の寄せ集め部隊のトップだな。」
「バラン将軍の第3部隊は、民衆の逃げる手助けでもしていればいい。」
「あの程度がオーガになろうと、我が騎士団の敵ではない。」
「王よ、貴族の皆様方。安心してください。ここで我が騎士団の強さをご覧ください。」

他の将軍達が敵の強さも知らずに、自分達の力の誇示を行おうとしている。

「オリバー隊長、市民の誘導に最低限の兵士を回して第3騎士団を集結させろ。」

王の許可なくバラン所軍がこの場を動くことは出来ず、代わりにオリバー隊長に動く様に指示を出している。
私も待機していた護衛に指示を出した。

「第3騎士団に加わり全面的に支持しろ。」

屋敷からは、いざという時の為に拓殿が用意してくれたポーションを持ってきている。
しかし、それが有ったとしても、敵を倒すことは出来るだろうか。


「騎士団よ。その謀反を起した者共に、正義の鉄槌を。掛かれ。」

王の側に立っていた騎士団長の号令で、敵を囲っていた騎士団から魔法攻撃が始まった。
囚人達が短剣を自分の胸に刺すと、高濃度の魔力により攻撃は弾かれ全員がハイオーガに変身してしまった。

ハイオーガの硬い皮膚には、騎士団の魔法攻撃は効かず、剣で切りかかるもかすり傷をつける程度だ。
騎士団の包囲網が崩れる中

「慌てるな、目や口の中を狙え。柔らかい部分が奴等の弱点だ。
 奴らは連携を取って戦わない。1体1体確実に仕留めれば勝てる。」

バラン将軍が声を張上げる。
しかし、浮き足立った騎士達がまともに陣形が取れるまでに時間が掛かり、かなりの騎士が倒されている。

「バラン、行けるか。」
「はっ、仰せのままに。」

王の命令で、バラン将軍が戦いの場へと赴いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...