上 下
608 / 752

608抽象画

しおりを挟む
サリナ姫とヨハン王子の絵が描き上がり、この話は中断したた。
早速、描き上がった絵を見せてもらうと

「凄いな。ヨハンさんの絵なんてそっくりじゃないですか。
 それに比べて、サリナお姉さんの絵は何ていえば良いのか・・・芸術的ですね。」

ヨハン王子の絵は良いのだが、サリナ姫の絵は抽象画の様な顔が描かれていた。

「わっ、私のは良いのよ。ヨハンの絵が有れば問題ないわ。
 お待たせしました。遺跡の調査を行いましょう。」

俺が見ていたサリナ姫の絵は取り上げられ、皆が戻ってきた所で遺跡の調査が始まった。
内部の建物は昔の原型を留めており、何かの研究施設の様だった。
闇の魔力は建物の中に充満していて、発生源が何処か判断出来ず順番に部屋を回る事にした。

サリナ姫は間取りを描きながら、部屋の確認を行っている。
絵の才能は独特だが、この様な作業は得意らしく分かり易い図面が出来上がっていく。
昔に盗人が入ったのだろう。部屋は荒らされた痕跡が有り、残骸しか残っていなかった。

『拓、そろそろ一度建物の外に出るんじゃ。
 長く高密度の魔力の中に居ると魔力酔いになるぞ』

そう言えば、リッチの居るムハンマの神殿では、濃い闇の魔力の所為で俺と浩司以外は全員魔力酔いで体調不良を起こしていた。
あそこよりは、魔力が薄いが長時間滞在しているのは危険だろう。
ガラに魔力酔いの事を話すと、ガラも同じ事を考えていたらしく、

「一通り部屋を回った所で、建物の外に出よう。
 濃い魔力が有る場所で長時間過ごすのは危険だ。」

そう言って、サリナ姫の図面が出来上がった所で一度外に出た。

「部屋は盗みに有って物が取られていやがる。
 何も無いのに、何処から闇の魔力が流れ出ているんだ。」

サッパリ分からないという感じで、アルが言う。
何処かに魔力が出ている場所が有ると思うが、建物の中に魔力が充満していて出所が分からなかった。
先ずは様子見で各部屋を回ったが、次は地下室が無いか調べた方が良さそうだな。
そう考えていると、サリナ姫が

「私の知っている遺跡には、隠し扉で塞がれた地下室が有りました。
 もしかすると、この遺跡にも地下室が隠されているかも知れません。」

そう言っって、図面上の3つの部屋を指示す。
2部屋は俺も怪しいと思っていた部屋で、残りの1部屋は考えても無かった個室を指していた。


「サリナお姉さん。その2つの部屋は理解できるけど、その個室は何で怪しいと思ったの。」
「遺跡の調査資料にたまに出てくるのよ。
 推測だけど、プライベートな実験を行う為の地下設備だと思うわ。
 拓ちゃんの好きそうな秘密基地って感じかしら。」

秘密基地か。その説明に何となく納得してしまった。


******(トウ)

俺達は、ガラさんや拓さんが戻って来るまで馬車の警備を行っている。
昼間、バンとジャンと体を鍛えていると、

「精が出るな。俺達も付き合わせて貰っても良いか。」

そう言われて、御者の人達と稽古をしているのだが強い。
この人達の事を只の御者だとおもっていたが、俺達よりも腕は上だ。
こんな人達を馬車の警備に残すと言うのなら、調査に行った人達はどれだけの強さなんだ。

俺達に付き合うというより、俺達に稽古を付けてくれている。
それも、我流で戦って来た俺達に的確なアドバイスをしてくれながらだ。
俺達獣人に、こんな風に教えてくれるなんて本当に有難い事だ。
短期間だが、出来る限りの事を学ばせてもらう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

処理中です...