上 下
594 / 752

594お好み焼

しおりを挟む
今日でカレー専門店がオープンして2週間。
相変わらず行列は出来ているが、初めの頃よりは落ち着いてきている。
従業員の動きも無駄が無くなり、俺達の手伝いが無くても問題は無いだろう。

「2週間、店の手伝いをありがとうございました。
 こちら、報酬になるので受け取ってください。」

後は、手伝ってもらった皆に報酬の支払いを名ばかりのオーナーだが俺からさせて貰った。
思った以上に大変だったので、ポケットマネーから少し上乗せしてある。


明日からはヨーゼフさんのお好み焼屋がオープンするので、今夜は特別に店に招待してもらっている。

「自分で料理を作るのか。面白いな。」
「ここは私に任せて。レオさんに料理を習っているから大丈夫よ。」

サリナ姫とヨハン王子が喜んでいるが、お好み焼きの作り方を知っているのだろうか。
運ばれて来た具材やヘラ等を見て首を傾げると

「さぁ、拓ちゃん。お好み焼の作り方を教えて。」

やはり、そうなるか。
作り方の紙が置かれているが、見る気も無いらしい。
俺が試しに1枚焼くのを見せて、さっそくサリナ姫が作り始めた。

「行くわね。よいしょ。」

サリナ姫の渾身のフライ返しで奇麗に反転。

「どう、どう、どう、完璧に返せたわ。」

成功させた自分自身が驚いていたが・・・
そして、そしてソースとマヨネーズをトッピングして出来上がりだ。
鰹節や青のりが無いのが残念だが、仕方がない。

「熱っ。」
「何やってんだよ、拓ちゃん。料理を教えた本人が火傷をしてたらカッコ悪いぞ。」

浩司の言う通りだ。でも美味いな。
他にも、甘酸っぱいタレや辛いタレ等も用意されていて、味のバリエーションも多い。
レオもタレの提案をしていたみたいだ。

「拓ちゃん、この緑のタレ面白いぞ。」

浩司が美味しそうに食べているタレを使ってみたが

「癖のあるタレだね。」

この強い香りは、好みの別れる所だ。
浩司はたっぷりと掛けているが、俺は普通のタレの方が良いな。

「満足、満足。明日は新しくオープンした店を回ろうよ。」
「良いな。気になっていたんだよ。皆で回ろうか。」

カレー専門店と合わせて色々と店が開店していたが、店の手伝いで時間が取れていない。
浩司をデートに誘ったつもりだったが、皆で回るのも楽しいだろう。


次の日、新しいく開いた店を見に来たが、カレー専門店だけでなく、お好み焼屋の前にも行列が出来ている。
列には護衛付きで一般人の格好をした貴族の人も並んでいた。

「エチゴさん、貴族って、こんなに平民の店にやって来るものなの。」
「いえ、そうそう来る事は無いでしょうが、新しい物には興味が有るのでしょう。」

この世界は娯楽が少ないから、刺激に飢えているのだろうか。

「ニック殿から聞いた所、冬までには、この広場周囲は店で埋まります。
 治安の為に広場への入口には警備兵を常駐させるそうですよ。
 トリス練成術師の工房も有るので、これからも貴族の方々が来るのを想定しているみたいですね。」

そう言えば、トリス練成術師の工房の客は貴族が多いからな。
中には、店まで足を伸ばしてくれる人も居るだろう。

「ニックさんも、色々と大変ですね。」
「拓、何で他人事なんだよ。この状態のきっかけはお前だろうが。」

ガラに突っ込まれて改めて考えてみると、確かにそう言えなくもない。
それはそれとして、ニックさんには頑張ってもらおう。
後で、美味しい差し入れと、マッサージをさせてもらおうかな。

気を取り直して、先ずはパウロさん、ティムさんの店に寄ると

「貰った報酬を使わせてもらおうかしら。」
「結構な金額をもらったから、早速使わせてもらおうか。」

サリナ姫とヨハン王子が色々と見て、商品を選んでいる。
売り物で意外だったのが、ぬいぐるみ。こういうのも売っていたのか。
更に意外だったのが、それを見ているジークさん。もしかして欲しいのか。

「ジークさん、買うならこれが良いですよ。この巨大なのが。」

俺と対して変わらないサイズの巨大なぬいぐるみを勧めてみる。

「俺がこういうのを買ったら可笑しくないか。」
「そんな事無いですよ。意外性が有って良いと思いますよ。」
「そうか。部屋に置いたら少しは暖かみが出るかと思ってな。」
「それなら、幾つか有っても良いかもしれないな。」
「拓もそう思うか。この辺も良いかと思っていたんだ。」

そう言って、他のぬいぐるみを手に取ると、店員を呼んでまとめて購入する事を伝えていた。
女性陣も可愛らしいぬいぐるみを購入している。
屋台も出ているので、お昼は皆で色々と買い食いをしてみた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

処理中です...