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563限界の先

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暫くすると、森の方からラッターがトムさんとダニエルさんに向かって走り出してきた。
2人は、自分達に突進してくるラッターを楯でさばいて倒さずに蹴散らせている。
次第にラッターの数が増えて行くが安定したさばき方だ。

『ラッターは集団攻撃を行う魔獣じゃ。
 殺さずにさばいていれば、他のラッターも攻撃に加わってくる。
 全部が出てきた所で一気に叩き潰すつもりじゃろう。
 しかし、あの2人はなかなかやるじゃないか。
 未だ軽くシールドを張っているだけじゃが、昨日の今日で楯を上手く使いこなしておる。』

ラッターが全部で50匹位になっただろうか。
これ以上は、増えないので全て森から出てきたみたいだ。
トムさんとダニエルさんの楯に貼り付けたシールドが徐々に強くなっている。

『2人なら、もっと強いシールドを張れるだろうが、
 楯を動かしながらでは、今はここまでみたいじゃな。』

そのまま、30分以上攻撃をさばき続けて、そろそろ限界だろうと思ったが

「拓、2人の周囲にだけシールドを張れるか。」

ジークさんが聞いてくるので、問題ないと答えると

「なら、未だ行けるな。2人のどちらかが倒れそうになったらシールドを張ってくれ。
 それを合図に、俺達が攻撃を仕掛ける。
 限界になったと思った先が、真の特訓だ。」

正しいのかも知れないが筋肉脳だ。グリムもたいして変わらないか。
次第に2人の動きが鈍くなり、楯を地面に付けた所で俺がシールドで囲むと、土壁からジークさんが飛び出しラッター達を感電させる。
そして、全員でラッターに止めをさしていく。
ニコラスさんとアクセルさんも森から出てきて手伝い始めた。

感電しているだけで生きている大量のラッターを殺すのに躊躇ってしまい、皆には申し訳ないが俺は周囲の探索をさせてもらう。


村人が作業を終え毛皮と魔石を受け取り、ヨーゼフさん達に合流したのだが・・・
ヨーゼフさんの馬車は大勢の人に囲まれて凄い状態になっていた。

「無事に討伐が終ったみたいだな。こっちは、なかなか盛況だ。
 種や苗木の種類を多く用意してあり、価格も抑えてある。
 基本的には同じものを植えるだろうが、他の物も試したいのだろう。」

手伝っていたブルネリ公爵が教えてくれる。
ヨハン王子やブルネリ公爵は植物に関しても詳しいみたいで村人の質問にも問題なく答えている。
サリナ姫は会計を行い、バラン将軍達は売れた物を運んだりしていた。
それでも予定以上に時間が掛かり、村長がヨーゼフさんに自分の家に泊る様に言ってくれていたらしいが
流石に、これだけの人数は押しかけたら迷惑をかける。

「来る途中に、川が流れていたわよね。
 これは、キャンプをするしかないんじゃないかしら。」

サリナ姫の一言で、村長の提案は辞退させてもらい、河原へと移動となった。
サリナ姫のボロが出て、王族や貴族の集団だとばれない内に離れることに全員が賛成していた。
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