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392忘れ物

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屋敷の門まで来たのだが、俺はズボンのポケットに手を入れ困ってしまう。

「サリナお姉さん、エチゴ屋に忘れ物をしてきたみたい。取りに戻るので、先に帰っていてくれますか。」
「しょうがないな。俺も付き合うよ。ヤマトも付き合えよ」

浩司が俺の肩を叩く。ヤマトは俺の頭に乗っているので、俺が動けば自動的に付いて来るだろう。
サリナ姫には「何をやっているの、早く戻って来るのよ。」と呆れられ、皆が屋敷に入るのを見届けて俺達は来た道を戻った。


******(ガゼルス)

簡単に背後を取られるとは思ってもみなかった。

「後を付けてきた理由を教えてもらえますか。」

拓と名乗った子供か。そして前を塞いでいるのは浩司という若者。
やはり、見た目と違い、姫の護衛を行うだけの力量を持っているか。

「これは拓殿では有りませんか。浩司殿も一緒にどうしたのですか。
 若に許可をもらって散歩をしていただけですよ。」

とぼけたふりで拓殿の方へ近づこうとすると、私を捕まえようとダークマインドが発動された。
かろうじて後ろに飛び避けれる事が出来たが、何時の間に詠唱をしていた?
拓殿が仕掛けたのは理解できたが、タイミングが全く掴めなかった。
思わず、剣に手を添えてしまうが

「こんな所で剣を抜けば一緒に居たハンさんも只では済みませんよ。
 それに、拓ちゃんを傷つける気なら、貴方が何者だろうと全力で戦います。」

浩司殿は本気なのだろう。若いのに良い面構えだ。
力試しをしてみたい気持ちも有るが、大人しく剣から手を離した。

「流石は、サリナ姫の護衛を行うだけの人達ですね。
 私は、皆さんに敵対するものでは有りません。少し話をさせて頂いても良いでしょうか。」

剣から離した手を、ゆっくりと頭の上にあげた。


******

次の日も午前中の訓練を終えた後は、サリナ姫と一緒に町の散歩をしている。
せっかくだからと、カイやレム、トーマス、そしてOZの皆も一緒だ。
市場で食材を見たり、練成術の素材を探したりしていると、ハンさんがガゼルスさんを連れて俺達に合流してきた。
ガゼルスさんが俺と目が合うと、軽く会釈をしてくる。

「こんにちはサリナさん。今日は賑やかですね。私達もご一緒させて頂いても?」
「良いわよ。こちらはハンさんとガゼルスさん。昨日、知り合ってエチゴさんの店にも案内したの。こちらのメンバーは・・・」

サリナ姫が皆を紹介すると、ハンさんは「宜しく。」と言って直ぐに打ち解けていた。
ハンさんは獣人に対しても偏見は無いみたいで、カイやレムとも普通に話している。
カイやレム、トーマスはハンさんの旅の話に興味が有るみたいで色々と聞いては楽しんでいた。
ハンさんもサリナ姫も、近所に居る気さくな お兄さんとお姉さんって感じだ。
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