異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

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321宮廷魔導士

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食事の時、ヨギさんがブルネリ公爵とバラン将軍が昔、魔法の特訓をしていた頃の話をしていたので
ブルネリ公爵とバラン将軍の魔法の教師をする事になった経緯を聞いてみると

「なに、たまたま知り合う機会があってな。
 私の様な爺にも礼を忘れずに対応するので、ちょっと教えてやっただけだ。」

余り言いたくないのかと思い、これ以上は聞くのを止めようとしたが

「何を言われているのですか。拓殿、ヨギ師匠は宮廷魔道師のトップの方なんだ。
 いやいや、本当に限界までしごかれたものだ。」

バラン将軍が代わりに答えてくれた。
宮廷魔道師のトップと言う事は、この国の最高魔道師・・・そんなに凄い人だったのか。
当のヨギ魔道師はバラン将軍の頭を杖で叩き

「元宮廷魔道師だ。今は隠居してノンビリ暮らしている。
 今回は、バランから無理やり呼び出されて出てきただけだ。
 しかし、拓や浩司と会う事が出来てなかなか楽しかったぞ。
 2人は宮廷魔道師になってみないか。その気が有るなら、直ぐにでも紹介しよう。
 辞めたとはいえ、まだ知り合いも多いから力になれるだろう。」

ヨギ魔道師の言葉に周りの人が驚いているのが分かった。
宮廷魔道師は凄い立場だとは思うが、

「そういうのは苦手なので、生活が苦しくなったらお願いします。」

「俺も今の生活を気に入っているので遠慮します。それに拓ちゃんが居ないなら行っても仕方ないですから。」

俺と浩司はあっさり断ってしまった。周りが静かになる中

「拓ちゃん、ヨギ魔道師が推薦してくれるって凄いのよ。凄い幸運な事なのよ。分かっているの。
 そもそも、宮廷魔道師は生活が苦しいからなるものではないのよ。」

サリナ姫が俺の肩を掴んで揺さぶってくる。

「そう言われても、別に宮廷魔道師になってやりたい事なんて無いですから。
 逆に色々と規則に縛られて、遣りたい事も出来なくなるだけですよ。
 それに、OZの皆と冒険者を続ける方が俺に合っていると思うので。」

「そうよね。拓ちゃんってそう言う子よね。男のロマンなんて言ってしまうのよね。」

サリナ姫は溜息を吐き、ヨギ魔道師は笑っていた。

「2人にとっては、王宮魔導師に何も魅力を感じないのか。
 自分の夢を託せるかと思ったのだが、残念だ。」

「ヨギ魔道師の夢って何ですか。凄い魔法や魔道具の開発とか?」

「いや、気に入らない宮廷魔導師を叩き潰したい。
 私が居た時に偉そうにするだけで何もしない奴等を放り出していたんだが、
 邪魔くさい貴族共の所為で完全に一掃は出来なかったからな。
 あんな奴等を税金の無駄使いと言うんだろう。」

ブルネリ公爵やバラン将軍の方を見ると、目を逸らされてしまった。

「私はグリム大魔導師の様になりたかった。
 性根の腐った者達を階級に関係なく薙ぎ倒し、彼の通った後には悪は死滅していたそうだ。
 人間凶器。歩く災害。若い頃は憧れた。」

そんな物の何処に惹かれるのか全く理解できない。
当のグリムも何も言わず、沈黙を保っている。
ヨギ魔道師の託したい夢って、国王がやる事で、俺に託す夢では無いと思う。
それに、実際に行動に移すとすると『人間兵器』と言われてしまうのではないだろうか。
全く、魔法を極める人間というのは、危険人物しかいないか。
浩司が、こんな風にならない様に、俺が気を付けないといけないな。

「何だか、拓ちゃんの将来像って感じだよな。こうならない様に俺がしっかりするしかないか。」

浩司は何をバカな事を言い出すんだ。俺ではなく、お前の方が心配だ。

「それは今更よ。既に、そんな感じになっていると思うわ。
 浩司さんのすべきは、根本的な拓ちゃんの考え方を修正する事だと思うの。」

サリナ姫が更に見当違いの事を言っている。
本当に人を見る目が無いな。姫なんだから笑い事では済まされないと思う。
ブルネリ公爵とバラン将軍に言っておいた方が良いと思って見ると、この2人まで頷いている。
いや、OZやアーク、クリームまで、何を頷いているんだ。
俺のイメージって、こんなに酷いものだったのか。

『拓の攻撃力は低いから、人間凶器にはならないにゃ。そうだにゃ、錬成術を使った毒男にゃ。』

このデブ猫、俺に止めを刺しに来たか。浩司は吹き出すんじゃない。

その後、俺のイメージ改善の機会も得られず、高級料理店めぐりも全て終わり、
サリナ姫が帰るタイミングで俺達OZも帰る事にした。
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