上 下
303 / 749

303セバスチャンのサプライズ

しおりを挟む
「今年も、無事にイルミネーションを行う事が出来て嬉しく思う。
 では、さっそくカウントダウンを10、9、8・・・・3、2、1、点灯」

至る所に光が満ちた。
流石のバラキエ侯爵も、この光景には驚いている。

「今回は、新しい企画も用意してあるので、音楽が聞こえたら広場に戻って来て欲しい。」

ブルネリ公爵の隣で、セバスチャンが嬉しそうな顔をして立っている。

庭を回って、皆でこの光景を楽しんでいると広場の方から音楽が聞えて来た。
皆が集まった所で、アップテンポの曲に替わった。

「良いぞ」「奇麗」「可愛い」

見ていた人達から、声が上がる。
建物の陰から音楽に合わせて踊りながら人が出てきた。それも、光る服を着て。
女性が裾の広がったドレスに妖精の様な可愛らしい姿で可憐に舞った後は、男性が剣を持ち演武を力強く舞っている。

一通りの舞いが終わると、皆から盛大な拍手が上がった。
セバスチャンが前に出てくると

「ロダン侯爵領の方々による、可憐で力強い舞いに今一度、盛大な拍手をお願いいたします。」

皆の拍手が治まるのを待って、セバスチャンに代わりロダン侯爵が話を続ける。

「今回の、イルミネーションパレードではロダン侯爵の方々に華を添えて頂きます。」

セバスチャンの言葉を聞いて、皆から改めて拍手が上がった。
セバスチャンが後ろに下がると、ロダン侯爵が

「この素晴らしい場に、我々の参加を認めて頂き感謝する。
 皆さんには、心ばかりのプレゼントを用意させて頂いた。
 我が領地の工芸品を是非記念に着けて頂けるとありがたい。」

ロダン侯爵にモーゼスさんが木工細工の腕輪を渡した。
ロダン侯爵が魔力を込めると、ほんのりと光った。光の魔道具を埋め込んであるのだろう上品な輝きだ。

「これは、なかなか良い手ですね。屋敷の方々が付けていれば良い宣伝になります。
 それに、サリナ姫やブルネリ公爵が着けられるとなると貴族も目を向けるでしょう。」

エチゴさんが感心しているが、これは1番客を狙う俺としては問題ではないだろうか。
店の前に行列が出来ているイメージしか浮かばない。
俺が悩んでいる間に、ロダン侯爵がサリナ姫に腕輪を渡そうとしていた。

「これが、ロダン侯爵領の工芸品ですか。なかなか素晴らしい物ですな。」

そう言って、バラキエ侯爵がロダン侯爵とサリナ姫の間に入り、腕輪を受け取り魔力を流した後サリナ姫に渡していた。
言葉とは裏腹に、態度は工芸品を見下している様に感じる。
直ぐにサリナ姫が礼を言って場を収めたが、空気がピリピリしている。
ロダン侯爵も場を繕うとバラキエ侯爵にも腕輪を渡そうとしたが丁寧な言葉遣で断っていた。

「あれは何だよ。全く頭に来るな。一体何しに来たのかって感じだよな。」

浩司も、バラキエ侯爵の態度には完全に腹を立てている。
獣人だけでなく、獣人を擁護する貴族も気に入らないか。
しかし、それなら何故ブルネリ公爵領に来たのだろう。ここは嫌いな人の巣窟だと言うのに。
その後は、何も口をはさむ様な事はせず、腕輪を受け取り皆が喜び、楽しい雰囲気が戻ってきた。
俺も腕輪を受け取ったが、アイテムボックスとガリウム鉱石で造った魔力を蓄える腕輪型の魔道具を付けているのでイマイチな感じになってしまったが仕方が無い。

「拓様、今回のサプライズは如何でしたか。」

俺の所にセバスチャンが嬉しそうにやって来た。

「凄かったです。これでパレードを行えば領民の方々も驚きますよ。
 これが、ブルネリさんと行った交渉結果ですか。」

「さようでございます。パレードを華やかにし、空いた時間で店を出す許可を頂きました。」

パレードは週1なので、それ以外は売り場に専念できる。

「全く、セバスチャンまでOZに感化されてしまうとは。正直、私に話を持ちかけてきた時は驚いたぞ。」

ブルネリ公爵が苦笑いをしながらやって来た。

「それは、俺達では無くサリナお姉さんとバラン将軍ですよ。
 あの2人に影響を受けたに決まっています。ブルネリさんも影響を受けまくっているじゃないですか。」

ブルネリ公爵が苦笑いをしていると、いきなり脳天に一撃が。
後ろを見ると、話題のサリナ姫とバラン将軍。レムも一緒に居た。

「全く失礼ね。少しは自分の事を見直しなさい。
 お淑やかな私が、こんな風になったのも拓ちゃん、貴方の所為よ。」

俺の事を指して何を言っているんだ。初めからお転婆だったくせに、サリナ姫こそ自分を見直した方が良いと思う。
そんな事を考えていたら、追加で姫チョップが脳天に直撃。
バラン将軍は、相変わらず横で笑っているだけだ。
何とも理不尽な、俺って可哀想。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界薬剤師 ~緑の髪の子~

小狸日
ファンタジー
この世界では、緑の髪は災いを招く「呪いの子」と呼ばれていた。 緑の髪の子が生まれる時、災害が起きると言われている。 緑の髪の子は本当に災いを招くのだろうか・・・ 緑の髪の子に隠された真実とは・・・ 剣と魔法の世界で、拓は謎に立ち向かう。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

処理中です...