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199冷凍庫

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「拓殿の手紙に書いてあった構想通りだと思うが、如何かな。」
「すると、この建物は冷凍庫なんですか。」
「少しは驚いてくれたみたいだな。後は魔道具を設置すれば稼働する事が出来る。」

遺跡に出発する前に、俺はブルネリ公爵に手紙で寒天を作る工場の提案をしていた。
実際に作った寒天と、それを使った幾つかのレシピ
寒天を作る為に必要となる設備について合わせて記載しておいた。
実際には、30度を超えると溶けてしまうみたいでゼラチンの様な食感だ。
丁度、良い魔石も手に入ったのでコアも準備できる。
利益を見込めるなら、この町の孤児達の収入源として経営をして頂きたい旨を伝えた。
寒天なら輸送も出来るし、デザートという付加価値を付ければ貴族相手にも売れると考えている。

「私の方でも検討してみたが、十分な収入を得られると考えている。
 経営を行う以上、働く人達との顔合わせを兼ねて設備を作る所から来てみた。」

出来上がった冷凍庫を見て、ブルネリ公爵は満足そうだ。

「しかし、拓殿の要求は、あれで良いのか。」
「特に問題無いです。」

俺の要求は、利益の1割と一定量の寒天を受け取る事だった。
以前、風邪薬でエチゴさんと取り分について話した時、技術提供の取り分は一般的に2割と言っていた。
技術料無しと言うのは対外的に問題になるらしいので、取り分を1割とした。
魔道具の提供は、寒天が定期的に入手できるようにしてもらえれば無償で良い。
使用する魔石は疫病騒動の時、白い壁の区画で家探しをして手に入れた物で俺の懐は痛まない。
後は、孤児達の生活基盤が出来きれば問題無い。

「とりあえず、1つ魔法陣を描き終えた魔石が有るので、最後の仕上げを行ってしまいましょう。」

一般的に魔道具に使う魔石は、最後に圧縮という作業を行い小さい球状にして魔道具のコアとして使用する。
しかし、この冷凍庫のサイズで有れば、わざわざ小さくする必要は無いだろう。
そのまま、大きな魔石の状態で設置する事にする。
外から魔力供給を出来る様にしたりと、思っていた以上に設置に時間が掛かってしまった。
昼飯を届けに来てくれたオリバー隊長やクリームのメンバーも、そのまま待っていてくれた。

「完成したので、起動実験をしてみましょうか。」

俺はアイテムボックスより冷気を発生させる魔法陣を描いた大きな魔石を取り出し建物の天井に設置した。
このメンバーなら、もうアイテムボックスを使っている事を知られても問題ないだろう。
実際、皆の前で取り出しても、やはりという感じで、誰も驚かなかった。

「起動は、入口横に嵌めてある丸い玉に魔力を流すだけです。
 ただし、何か起きると怖いので、初めは中に入らないで外に出ているように。」

浩司が魔力を流すと、魔石から冷たい冷気が発生した。
冷やすまでに、かなりの魔力を使用するが、1度室内の温度が下がれば冷凍庫の保温性が高いので維持するのは問題無い。
問題無さそうなので、全員で中に入って扉をしめてみる。

「お~、涼しいな。」
「いや、涼しいと言うより、寒くないか。」

凍らせる為の冷凍庫なので当たり前だ。
一応、建物の周辺を確認してみたが、冷気は問題無く封じ込められているみたいだ。
残り2棟の冷凍庫にも魔石を設置し、分からない様に魔石にカバーをつけて外せない様にしておく。
明日にでも、棚を設置すれば施設の完成だ。
すると、セバスチャン、ルドルフ料理長がどこからか、四角い器に流し込んで固まった寒天を持って来た。

「やはり、最後は実際に作ってみないと分からないからな。」

ルドルフ料理長はそう言うと、トコロテンを押し出す様な道具を使って藁を引いた上に、糸状にして並べていく。作るのは糸寒天。
俺が今日中に作り上げる事を見越して準備をしていたみたいだ。
準備が全て終わり外に出ると、ヤマトがルドルフ料理長の足元に纏わりついていた。
ヤマトの奴、昼食でルドルフ料理長から食事をもらって気に入ったみたいだ。
食べ物で簡単に釣られるなんて魔獣としての誇りは無いのだろうか。
ルドルフ料理長も、ヤマトに懐かれて嬉しそうに抱きかかえる。

それにしても、腹が空いた。
もう少し、もう少しと結局、最後まで作業を続けてしまったしな。
早く宿に帰って、美味しい晩飯を食べたい。
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