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192ヤマト

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黒猫は、必ず食事の時にはレオの横に座り、食事が終わると俺か、浩司の側で休んでいる。
俺と浩司、そしてグリムだけが黒猫の声が聞こえるみたいだ。
今やCランク程度の力しか無く、安全の為に俺達と行動を共にしていると言っているが、レオの料理を食べたくて一緒にいる様にしか見えない。
レオも、嬉しそうに食事を与えているが、その肥満体は大丈夫なのだろうか。
それにしても、一緒に行動するとなると名前が無いと不便だな。

「名前が無いと呼びづらいな。名前は無いのか。」

『名前などないにゃ。拓が考えてくれないかにゃ。』

「そうだな、『タマ』や『クロ』とかどうだ。」

『・・・それは、本当に真面目に考えているのかにゃ。』

「拓ちゃんに名前のセンスを期待してもな。」

『そうじゃな。拓のセンスでは、そんなモノじゃ。』

浩司とグリムまで失礼な事を言っている。愛嬌が有って良いと思うのだが…

「じゃぁ、浩司と俺の名前の頭文字を取ってコウタ。」

『もっと吾輩に似合う名前は考えられないのかにゃ。』

我儘な黒猫だ。浩司も、グリムも俺のセンスを否定してばかりしているし。
こいつ等が受け入れる名前か・・・さて、どうしたものか。

「じゅあ、俺達の居た国にちなんで『ヤマト』なんてどうだ。」

『ヤマト…お前達の国にちなんでいるのも良いにゃ。気に入ったにゃ。』

俺としては、コウタクの方が良いと思うが、知能が高いと言っても所詮猫なのだろう。

「拓ちゃんにしては、カッコいいと思う。」

『良い名前じゃ。考えれば出来るものじゃな。』

猫と同等のセンスしか持たない浩司とグリムが賛成し、黒猫の名前は「ヤマト」に決まった。
6日後、船が戻ってきた。危険を知らせる為、予想以上の速度で港へ進んでいて時間が掛かったらしい。
直ぐにポトリ教授が遺跡に向かったが、崩れてしまった後を前に立ち尽くしてしまった。
探索魔法で瓦礫の状態を調べてみたが、完全に埋まってしまい手の施しようがない。
俺も土魔法を試してみたが、魔力が通り難い材質みたいで崩す事は出来なかった。
俺も浩司は休んでいる様に指示され、邪魔にならない様に浜辺で寛いでいた。

「浩司殿、拓殿、少し良いか。」

バラン将軍が、1人の兵士を連れてくると

「この度は、本当に申し訳ありませんでした。」

いきなり、俺達に頭を下げて謝ってくる。この兵士は何を謝っているのだろう。
浩司を見ても、謝る理由が分かっていないみたいだ。
話を聞くと彼は魔力を吸収する装置の調査を行っていて、台が倒れた時、魔石を外してしまっ人だった。
この数日で、やつれた感じがする。

「あれは不可抗力ですから、気にしないで下さい。
 結果で言うのは違うかも知れませんが、お陰で助かった者も居ますので。」

真面目そうな人だから、悔やんでまともに食事や睡眠が取れていないのだろう。
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