上 下
147 / 752

147サリナ姫、勉強

しおりを挟む
******(サリナ姫)

あの時、オリバー隊長を助ける為に、壁の中で何が起きたのかは分からない。
OZの人達も、ピース医師も何も話さず、私達も何も尋ねない。
尋ねてはいけない気がする。

あの時、信じられない程の魔力を感じ、壁が崩れた時には、倒れていた拓ちゃん、浩司さん、ピース医師。
他のOZのメンバーは立っているのもやっとの状態だった。
そして、拓ちゃんが1人だけ目も覚まさなくてどれだけ心配したか。
目を覚ましても、指1本も動かす事も出来ずにいたと言うのに。
あれから未だ10日しか経っていないと言うのに。

「ちょっと拓ちゃん。何で寝ていないのよ。」
「魔法を使わなければ、普通に動いても問題ありませんから。
 昨夜だって、皆でイルミネーションを楽しんだじゃないですか。
 横になっていても暇だから、カイとレムの勉強を見てあげようかと。」

全く、何だかんだ言っても子供なのよね。
本当に子供ってじっとしていられないんだから。
浩司さんが、心配で付きっきりになるのも分かるわ。

「子供の勉強位なら私も一緒に見てあげるわ。
 だから、無理をしない様にするのよ。」

そういえば、OZって孤児院の子供に勉強を教えているんだっけ。
でも、拓ちゃんって年齢的に教えてもらう方なんじゃないかしら。
ここは、年上として私が見てあげた方が良いわね。
浩司さんはもちろんの事、バラン将軍も一緒に付いて来るみたい。
バラン将軍って本当に拓ちゃんを気に入っているのよね。
拓ちゃんが倒れた時、あんなに焦っている姿を初めて見たわ。

それにしても、

「なんなのよ、この算数って。こんなの、勉強したことも無いわよ。」
「いや、サリナお姉さん。社会に出て必要になる最低限の知識だよ。」
「折角だから、バラン将軍も一緒にやりましょう。」

バラン将軍に算数の教科書を見せると、同じように頭を悩ましている。

「ほら見なさい。拓ちゃんがズレているのよ。」

何よ、その溜息は。

「自分の知識が足らない事を、他人と比べてどうするんです。カッコ悪いですよ。
 知識や技術の上限なんてありません。
 孤児院の子は独り立ちしなければならないんです。
 その時に、武器となる知識が必要なんですよ。」

私は、何も分かっていなかったのかも知れない。
獣人の事を考えているつもりで、自分の意地を通しているだけだったかも。
拓ちゃんの方がずっと、彼等の事を考えている。
本当に私ってカッコ悪い。

「ごめんなさい、拓ちゃん。良ければ、私にも教えてくれないかしら。」
「喜んで。アークの人が写本の余りを持っていないか聞いてくるね。」
「もし良ければ、私にも教えてもらえないだろうか。」

バラン将軍も受けたいと言うので、2冊譲ってもらった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...