107 / 749
107村を捨てる
しおりを挟む
******(カイ)
俺の住んでいた村は酷い場所だった。
生きるために、獣人は一日中働いた。いや、働くしかなかった。
体だけは大きかった俺も一生懸命両親の手伝いをした。
あの日の夜、20人程の獣人が村を棄てて逃げることにした。
冬の移動は大変だが、冬眠している魔獣も多く一番安全な季節だ。
これから向かうブルネリ公爵領は獣人の差別が禁止されているらしい。
寒さの中、厳しい移動だったが新しい町での生活に希望を持っていた。
後5日も歩けば町に着く・・・そんなときに、盗賊に襲われた。
皆バラバラに逃げた。父さんと母さんに手を引かれ何処を走っているのかも分からなかった。
レムも一生懸命に走ったが、大人の足には敵わない。
盗賊に追いつかれそうになった時、
「カイ、レムを連れて早く逃げろ。」
父さんと、母さんが盗賊に向かって行くのを見て、俺は泣いているレムの手を引いて森の中をひたすら走った。
風が強くなり、直ぐに吹雪になる。
この吹雪から身を守る場所を見つけないと。
数メートル先も見えなくなる中、レムを抱きしめて雪の中を進む。
「レム、大丈夫か。もう少し頑張ろうな。」
「お兄ちゃん、お父さんと、お母さんは」
「無事だよ。きっと後で会える。さあ、行こう。」
本当に会えるなら、どれだけ嬉しいか。
雪が降り足跡を隠してくれたが、俺達もこの雪の中で完全に道が分からなくなった。
「お兄ちゃん、もう眠いよ。」
「レム、寝ちゃだめだ。」
辺りは吹雪となり、もう歩くのは無理だ。
レムを抱きしめて少しでも温めようとしたが、俺も限界だった。
父さん、母さん、ごめんなさい。俺、レムを守る事が出来ない。
空耳か。吹雪の中で声が聞こえる。
人間だった。盗賊なら、一矢報いてやる。
俺と同じ位の子供も一緒だ
後から知ったが、浩司さんと拓さんだった。
「安心しろ、君達を助けに来た。他には誰も居ないのか。」
浩司さんが声を掛けてきたが、獣人の俺達を本当に助けてくれるのか心配だった。
魔法だろうか。浩司さんに抱きしめられると体全体を温かい空気が覆った。
拓さんは、この吹雪の中で探索魔法をかけていたのだろう。
他に人が居ないと分かると、どこかに連れて行く事を決めたみたいだ。
自分達のコートを俺達に着させると吹雪の中を軽々と走り抜けた。
連れて来られたテントには大勢の人間が居た。
でも、俺が知っている人間とは違う感じがする。
テントの中は暖かく、直ぐに新しい服の着替えを渡された。
レムだけは、なんとしても守りたい。
何でもやる、だから妹を助けて欲しいと言う俺の言葉に、レオさんが大丈夫と言って温かいスープを渡してくれた。
こんなに美味しいスープは初めてだった。
そして食べた事も無いフワフワのパンに甘いジャム。
俺達がどうなったのか話をしているうちに、レムが眠くなってきたのかウトウトとしている。
そんな姿を見て、寝場所を用意してくれた。
温かい布団の中、今が夢でない事を願いながら重たくなった まぶたを閉じた。
俺の住んでいた村は酷い場所だった。
生きるために、獣人は一日中働いた。いや、働くしかなかった。
体だけは大きかった俺も一生懸命両親の手伝いをした。
あの日の夜、20人程の獣人が村を棄てて逃げることにした。
冬の移動は大変だが、冬眠している魔獣も多く一番安全な季節だ。
これから向かうブルネリ公爵領は獣人の差別が禁止されているらしい。
寒さの中、厳しい移動だったが新しい町での生活に希望を持っていた。
後5日も歩けば町に着く・・・そんなときに、盗賊に襲われた。
皆バラバラに逃げた。父さんと母さんに手を引かれ何処を走っているのかも分からなかった。
レムも一生懸命に走ったが、大人の足には敵わない。
盗賊に追いつかれそうになった時、
「カイ、レムを連れて早く逃げろ。」
父さんと、母さんが盗賊に向かって行くのを見て、俺は泣いているレムの手を引いて森の中をひたすら走った。
風が強くなり、直ぐに吹雪になる。
この吹雪から身を守る場所を見つけないと。
数メートル先も見えなくなる中、レムを抱きしめて雪の中を進む。
「レム、大丈夫か。もう少し頑張ろうな。」
「お兄ちゃん、お父さんと、お母さんは」
「無事だよ。きっと後で会える。さあ、行こう。」
本当に会えるなら、どれだけ嬉しいか。
雪が降り足跡を隠してくれたが、俺達もこの雪の中で完全に道が分からなくなった。
「お兄ちゃん、もう眠いよ。」
「レム、寝ちゃだめだ。」
辺りは吹雪となり、もう歩くのは無理だ。
レムを抱きしめて少しでも温めようとしたが、俺も限界だった。
父さん、母さん、ごめんなさい。俺、レムを守る事が出来ない。
空耳か。吹雪の中で声が聞こえる。
人間だった。盗賊なら、一矢報いてやる。
俺と同じ位の子供も一緒だ
後から知ったが、浩司さんと拓さんだった。
「安心しろ、君達を助けに来た。他には誰も居ないのか。」
浩司さんが声を掛けてきたが、獣人の俺達を本当に助けてくれるのか心配だった。
魔法だろうか。浩司さんに抱きしめられると体全体を温かい空気が覆った。
拓さんは、この吹雪の中で探索魔法をかけていたのだろう。
他に人が居ないと分かると、どこかに連れて行く事を決めたみたいだ。
自分達のコートを俺達に着させると吹雪の中を軽々と走り抜けた。
連れて来られたテントには大勢の人間が居た。
でも、俺が知っている人間とは違う感じがする。
テントの中は暖かく、直ぐに新しい服の着替えを渡された。
レムだけは、なんとしても守りたい。
何でもやる、だから妹を助けて欲しいと言う俺の言葉に、レオさんが大丈夫と言って温かいスープを渡してくれた。
こんなに美味しいスープは初めてだった。
そして食べた事も無いフワフワのパンに甘いジャム。
俺達がどうなったのか話をしているうちに、レムが眠くなってきたのかウトウトとしている。
そんな姿を見て、寝場所を用意してくれた。
温かい布団の中、今が夢でない事を願いながら重たくなった まぶたを閉じた。
13
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界薬剤師 ~緑の髪の子~
小狸日
ファンタジー
この世界では、緑の髪は災いを招く「呪いの子」と呼ばれていた。
緑の髪の子が生まれる時、災害が起きると言われている。
緑の髪の子は本当に災いを招くのだろうか・・・
緑の髪の子に隠された真実とは・・・
剣と魔法の世界で、拓は謎に立ち向かう。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる