上 下
93 / 749

093お年玉

しおりを挟む
「皆さん、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくな。これは、俺とレオから拓ちゃんへのお年玉だ。」

ガラが渡してくれたのは小さい袋。
この世界にはそんな風習は無く、それとなく・・・いや露骨に何度もお年玉の事を話していた。
この年になってお年玉をもらえるチャンスを逃す気は無い。

「おぉ、子供の特権お年玉。ガラ、レオありがとう。」

断って、中身をみると金貨が10枚入っていた。

「なっ、何を入れてるの。お年玉の意味を分かってないだろ。」
「浩司からは小遣いと聞いていたけど、良い機会だから俺達からの礼を込めて。」
「いやレオ、幾らなんでも、こんな大金はダメだよ。」
「俺達がこうしていられるのも、浩司や拓ちゃんのおかげだしな。
 それに、拓ちゃんが用意してくれた道具を考えたら微々たるもんだよ。
 本当は別の形で返したかったけど、錬成の為の素材を買う足しにでもしてくれ。」

ガラが話は終わりという感じで言うので、お礼を言って受け取った。
初日の出も見たので、屋根から降りようとすると浩司に呼び止められた。
他の人達は全員降り、俺と浩司だけが残っている。

「なぁ、拓ちゃん。その、俺からのお年玉と言うか、何というか・・・」

浩司が緊張している。そのまま黙って話し出すのを待っていると

「これを受け取って欲しい。」

小さい箱を渡された。

「中身を見ても良いか?」

浩司が頷くので、箱の中を見るとシンプルな銀の指輪だった。

「俺達の付き合いを何か形にしたくて揃いの指輪を買ったんだけど嫌かな。」
「嫌な訳がないだろ。さっそく着けさせてもらうよ。やはり左薬指かな。」

緩くて、直ぐに抜けてしまう。そこで、魔道具のペンダントの鎖に通しておくことにした。

「何で、錬成術でサイズを合わせないんだ。」
「この指輪に対しては無粋な気がして。俺が大きくなってサイズが合うようになったら着けるよ。」

浩司に抱きしめられ、今年初めての少し長いキスをして屋根から降りた。


お節、お雑煮と正月の3日間を十分堪能した所で、ブルネリ公爵がこれからの予定を聞いてくるので

「一応、当初の目的だった本の方は読みましたので、そろそろ引き上げようかと考えています。」
「何か予定でも。」
「特には有りませんが、余り長居をするのも失礼ですし。」
「それなら、もう1ヶ月ほど滞在してはどうだろうか。」

ブルネリ公爵の話では、サリナ姫に足止めをするようお願いされているらしい。
遺跡調査での襲撃のため、暫くは外出禁止、年始は社交パーティ等もあり、しばらくは身動きが取れないそうだ。
来週、新年早々のパーティにはブルネリ公爵も出席しサリナ姫に挨拶をしに行く。

《サリナ姫の事だからストレスが溜まっているんだろうな。せっかくだから顔を見てから帰っても良いかな。》

OZのメンバーも同意してくれたので

「お言葉に甘えて、もうしばらくお世話になります。」
「それは良かった。サリナ姫も喜ぶ。そうそう、こちらを用意させてもらった。」

そう言って小さい袋を皆に渡した。

「私からのお年玉だ。」
「「ありがとうございます。」」
「喜んでもらえて何より。こういう風習も面白いな。」

中を見ると、金貨が1枚入っていた。
貰い過ぎだが、素直に頂くことにしよう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

異世界薬剤師 ~緑の髪の子~

小狸日
ファンタジー
この世界では、緑の髪は災いを招く「呪いの子」と呼ばれていた。 緑の髪の子が生まれる時、災害が起きると言われている。 緑の髪の子は本当に災いを招くのだろうか・・・ 緑の髪の子に隠された真実とは・・・ 剣と魔法の世界で、拓は謎に立ち向かう。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

処理中です...