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009解体

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「やったぞ浩司。俺達、勝ったんだ」

笑いながら浩司が振り向いたが、そのまま膝から崩れてしまった。
急いで駆け寄り、その体を支える。

「ハハハッ、やったな。俺の魔力を全て注ぎ込んでやったぜ」

『大丈夫じゃろう。魔力の使い過ぎで疲れているだけじゃよ。
 魔力枯渇に回復魔法の効果は無い。休ませておけ。
 それにしても2人だけでレッドタイガーを倒すとは、なかなかじゃったぞ。』

グリムの言葉にほっとし、お互いの無事を喜んでいると。

『まだ気を抜くのは早い』

グリムが俺達に近づいてくる複数の魔獣の気配を感じていた。
逃げていたグリーンウルフが戻ってきたみたいだ。
大丈夫だ、魔力は未だある。浩司ほどではないが、俺も攻撃魔法くらい使える。

そして草薮が動くと10体ほどのグリーンウルフが表れた。
俺は浩司を後ろに庇い、剣を構える。
しかし、こちらを見ているだけで一定の距離を保ったままだ。

その中でも体の大きい1体が前に出てきて、俺の前でひれ伏す。
それに合わせて、後ろに控えていた全員がひれ伏した。

『どうやら、戦いの意志は無いことを示している様じゃな。拓よ、どうする。』

こんな状態で戦わなくて良いのなら、その方がいい。
剣を構えながら、前に出て来たグリーンウルフに近付き、ゆっくりと手を伸ばして首を撫でてみた。
一瞬、グリーンウルフはビクッとしたものの大人しくしているのを見て、やっと緊張を解いて横に座った。

「やっと一息つける。浩司が動けるようになったら帰ろう。」
「助かった。この状態で戦いになったらどうしようかと思った。」

そう言うと、浩司は大の字で仰向けになった。
後ろに控えていたグリーンウルフが遠吠えをすると、草薮から更に20数体のグリーンウルフが出てきた。
新たに出てきたのは全員酷いケガをしていて、足が折れているのまでいた。
驚かせないよう、ゆっくりと近付きケガをしている部位に回復魔法をかけてゆく。
全員の治療が終わると、尻尾を振るウルフ達に囲まれ顔中舐められまくり顔がベットリだ。

「ほどほどにしてくれよ。お前等臭いぞ。」

俺を見て浩司が大笑いをし、俺も笑ってしまった。
魔獣だからといって、全てが人間を襲うわけではないみたいだ。
グリムには、今の状態が特別と思った方がいいと言われてしまったが…

「グリム、このレッドタイガーの死体はどうすれば良い」

『そうじゃの、肉は食べられた物ではないが、こいつの皮は物理防御、魔法防御に使えるし、爪や牙は武器に使えるぞ。
 後、体内に魔石があるはずじゃ。練成術に使える。』

それならと、グリムの指示に従って解体を始める事にした。
短剣をレッドタイガーに突き刺し、皮剥ぎ・・・は出来なかった。
剣を動かし下の筋肉が見えて来た所で胃がムカムカし、木の後ろで吐いてしまった。

「皮剥ぎだけで良いのか?十分休んで、動ける程度に魔力も戻ったから俺がやるよ。
 短剣をかしてくれ、拓ちゃんは少し休んでろよ。」

浩司に短剣を渡しグリムから教えてもらった事を伝えると、少し離れた所に座った。

皮剥ぎは1時間ほどで終わり、魔石を取り出した後は肉を小さめに切ってグリーンウルフ達に分け与えていた。
俺は剥いだ皮に浄化の魔法を使い、付着した汚れを取り除く。
グリーンウルフ達は、切り分けて残った肉に対し数体見張りを付け残りが自分達の巣に運び始めた。
それを見届け、グリーンウルフと別れた帰り道

「拓ちゃんが皮剥ぎをしようとした時は驚いた。
 俺の実家って酪農家なんで、ある程度は耐性があるんだ。
 初めてで、なかなか出来るモノじゃないよ」

背負ったレッドタイガーの皮を見ながら、いつもと同じような調子で話しかけてきた。気を使ってくれているのか。

「助かったよ。俺一人だったら何も出来なかった。錬成術で解体が一瞬で出来る様にならないかな。」
「それでも、解体した後に血や内臓は残るだろ」
「そうなんだよな…。やはり、慣れるしかないのか。」

正直、慣れる自信はない。早く町に出て安全な生活を行った方が良さそうだ。

「しかし、この森を抜けて町に行くなら戦い方を見直した方が良いな。」
「確かに、こんな危険を冒していたら町に無事にたどり着ける自信はないよ。」

とりあえず、帰ったら風呂に入って一休みだ。
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