上 下
362 / 531

360師匠?

しおりを挟む
拓は、国王、王族、勇者に挨拶を行うと、今日の目的を果たそうと会場へ出陣。
今までは逃げていたので分かっていなかったが、客観的に会場を見るとここは狩場だった。
初めは男性陣、女性陣で固まり様子を伺っていたが、お互いに見つけた獲物に徐々に接近。
見方によっては、大婚活パーティだ。
拓も頑張って女性陣と話すが・・・怖い。
笑顔なのに、肉食獣の匂いがプンプンする。

一歩離れると今度は貴族達が話しかけて来る。
休憩所やワイバーン等の素材についての礼を言われ、ワイバーンの素材を何に使ったのかと色々と話してくれる。
更にエチゴ屋が行ったヘビモスの販売の話が続く。

「拓殿はヘビモスの素材入手に関わっているのですか?」
「関わっていません。話を聞いた時、正直私も驚きました。
 今度、2回目の販売が行われますが、皆さんは行かれるのですか?」

地方から王都に来た貴族は参加し、1回目の販売に行った貴族であっても2回目の販売にも顔を出す予定らしい。
貴族達との話を終えると、何時もなら逃げ出す所だが今回はダンスの相手を探す目的がある。
再び女性陣との会話・・・
1時間もすると疲れてしまい、ハックとルーカスを見かけたので少し話相手になってもらおうと2人の所へ移動。

「拓様、この度はおめでとうございます。」
「流石は拓様です。おめでとうございます。」
「ありががとう。ああいう場は緊張するね。後、普通に話してもらえると嬉しいかな。」
「それは良いですが、大丈夫なのかな?」

ルーカスが戸惑ってしまうが、拓が問題ないと言い包める。
パーティ会場とはいえ、拓としては2人にまで様なんて付けられたら肩が凝ってしまう。

2人が授賞式で受け取った魔道具を見せて欲しいと言うので、今している腕輪を見せる。

「そうだ、ハックに渡すものが有るんだけど、今でも良いかな?」
「問題ないですが、何でしょうか?」

拓はアイテムボックスから腕輪を取り出した。

「魔力を貯める魔道具の腕輪。魔力は空だから自分で貯めてね。」
「・・・あの、これは先ほど国王様から受け取った褒美では無いですか?」

本来なら子供は参加できないが、ハックは父親が子爵に高格する為に特別参列を認められていた。
父親の時だけでなく、自分が尊敬する拓の魔道具の授与も何一つ見落とさない位の気持ちで見ていて、受け取った魔道具もはっきりと覚えていた。

「良く分かったね。ハックにと思ってお願いしたんだ。
 腕輪に貯めた魔力で浸して治療を行なえる様に成れば良いと思って。」

拓は気楽に魔道具を渡し、ハックも礼を言って素直に受け取り自分の腕にはめる。
しかし、それを見ていた周囲の貴族達は騒めいていた。

「やはり拓殿はハック殿の師匠なのでしょうか?」

ブルネリ公爵がやって来て拓に問う。

「いえ、そういう意味では兄弟弟子みたいな感じでしょうか。
 今、2人揃って神殿で教わっていますので。」
「そうですか。今2人の立場でそれだけの魔道具を渡すとなると師匠と弟子の関係としてみなされる行為ですね。」
「そうなのですか。私が師匠になってしまっては支障が起きてしまいますね。はっはっは」
「「「・・・」」」

拓とブルネリ公爵の話に耳を傾けていた貴族達は、誰一人笑うことなく黙ってしまった。
話しかけたブルネリ公爵ですら、困って苦笑い。
ルーカスが羨ましそうにハックの腕輪を見ているので

「ルーカスは魔導士じゃないからね。代わりにワイバーンの素材で防具を作ってみる?」
「良いのですか?」
「それなりに良いものだから、素材のプレゼントとで作るのは体が出来上がってからにした方が良いと思うけど。」
「ありがとうございます。」

貴族達はハックとルーカスが拓から特別に目を掛けられていると改めて思い知った。
貴族達の中には自分の子供や目を掛けている者の指導を依頼した者も多く居たが、全員断りを入れられ一定の距離を取られている。

少ししてロダン侯爵とピスタ子爵が貴族達の注目の先に自分の息子が居るのを知り急いでやって来た。
息子達の話を聞いて拓に礼を言う。
ただ、ルーカスの場合は一方的に拓を尊敬しているので、ロダン侯爵は躊躇ってしまう。

「しかし、ルーカスにまでその様な物を頂いても本当に宜しいのですか?」
「別に問題ないですよ。ただ、提供するのは素材だけになりますが。あっ、ロックバードやプテラの素材も有った方が良いですか?」
「・・・いえ、ワイバーンの素材だけでも十分すぎる程です。ありがとうございます。」

今回、商人達が販売したワイバーン、ロックバード、プテラの素材が拓から供給された事は貴族達も知っているが
「そこまで気楽に扱っていい素材なわけ無いだろう」と内心突っ込みを入れていた。

「所で、拓さんのダンスの相手は決まったのですか?」

ルーカスの言葉に貴族達全員が拓に注目したが「・・・改めて素材を渡しに屋敷に伺いますね。」それだけ言ってその場を離れてしまった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

嫁かと思っていたらスパダリだったんだが…

はやしかわともえ
BL
ゆるゆるBL小説です。 少しでも笑ってもらえたら嬉しいです。 完結しました! 今回出来なかった事は次活かす!

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...