上 下
294 / 535

294ワインとチーズ

しおりを挟む
夕食に出て来た料理は、拓の土産のキノコがたっぷりと使われていた。

「連続で食べるより、週に1度のペースが肌に丁度良いらしい。
 拓殿のお陰で国内での流通も改善するだろうから、定期的に入手できるようになるだろう。」

国王様の話に女性陣は頷きながら、キノコ料理を食べていた。
今年中に全て作り上げれば商人も動きやすくなり、国内の流通が活発になる。
バラキエ公爵の派閥の領地には休憩所を作っていないが、少し遠回りで他の派閥の領地を通れば王都までの安全に野営が出来る。

「拓様、次の目的地はどちらになるのですか?」
「具体的な場所は聞いていませんが、温泉が有ると聞いています。」

拓がサリナ姫に答えると

「拓殿の次の目的地は、ギオン山脈で温泉の他に巨大な地底湖が有るぞ。
 今は特別な物は無いが、途中の町ではワインと乳製品が有名だ。
 そこで作られるチーズはワインによく合う。」

何故か拓よりも拓の予定を把握している国王が説明する。
最後のワインとチーズという言葉を、あえて拓の方を見て話す。

「そうそう、チーズの種類は色々と有る。
 拓殿の持っている本にチーズを使った料理が合ったが、丁度良い種類が有るかもしれないな。」
「拓様、私の方でルドルフ料理長に確認をしておきます。」
「拓さん、料理本を貸してください。チーズ料理の翻訳をしますから。」
「私も手伝います。この間見ていて、丁度良いのが有ったのよ。」
「あっ、私も手伝う。種類が豊富なら、きちんと調べないと。」

国王に乗せられて、サリナ姫を筆頭に勇者3人まで拓が買って来ることを前提に話が進む。
拓としては、買って来るつもりなので良いのだが、何となく納得できないでいた。

「話は変わるが、拓殿はダンスは出来るか?」
「いえ、全くできません。」
「今度、舞踏会を行いたいと考えているのだが、その時には拓殿には是非出席してもらいたい。」

先ほど、サリナ姫から聞いていた話だった。
流石に拓が顔を出さない訳にはいかず「分かりました」出席することにした。
とりあえず顔を出して、何時もの様に挨拶をして直ぐに抜け出せば良い。

「それは良かった。ではダンス練習の準備をしよう。
 今回開催できないとしても、踊れるようになっておいて損は無いだろう。」

食事も終わり、拓としては勇者の3人とだけ話す機会が欲しい所だったので

「そう言えば、浩司の部屋ってどんな感じなんだ。良かったら覗かせてもらっても良いか?」
「良いですよ。と言っても、ホテルに住んでいる様な感じですけどね。」

オリバー隊長には外で待機してもらい、浩司の部屋に入ると20畳はある広さにトイレやシャワー室まで付いている。

「何か話が有るんじゃないですか?」
「前に話した遊覧飛行の件なんだけど、4人だけで1日行動できる様に出来ないかな?」
「本当にやってくれるんですね。」
「昼も良いけど、夜もお勧めかな。満月だと結構楽しめると思う。」
「後で、由美と里香と相談してみます。」

拓は今後の予定を話し、オリバー隊長と寄宿舎の方へと帰って行った。

****

国王の元には貴族達から拓を宮廷魔導士として迎え入れてはどうかと話が上がっている。
机の上には貴族達からの提案書が積まれていた。特にバラキエ公爵の派閥からの提案が多い。
拓が宮廷魔導士になれば、自分達の領地にも休憩所を作らせることが出来ると考えているのだろう。

「全く、何も分かっていない奴等だ。」

拓が色々と動いてくれているのは、自分より若い同郷の3人が勇者という事が大きい。
それを無理やり枠に当てはめようとすれば反発されるだけだ。
普通の魔導士なら制御できるだろうが、拓は異質過ぎる。

溜息を吐いた後、オリバー隊長から受け取った拓の魔道具の制御方法の質問に目を通す。
妙に具体的で細かい質問が記載されている。
この辺までなら答えても良い範囲だが、一体拓は何をするつもりか気になっていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

処理中です...