上 下
282 / 531

283パレード

しおりを挟む
今日はパレードが有るというので屋敷前の大通りに設置された観覧席へ案内してもらったのだが、昨日の様に拓にくっつくことは無く普通に対応している。

「それにしても、凄い人ですね。」
「ここが一番の見せ場になっているからな。是非、楽しんでくれ。」

拓はズゲベ侯爵の隣に座り、パレードが来る方を眺めていた。
人々にざわめきが起きると、徐々に音楽が聞こえてくる。
先頭は音楽隊、そして綺麗な服を着た女性や男性が踊りながら続き、その後はマッチョ、ガチムチ集団。
露出度が凄い。上半身は裸にハーネス、短いスカートの様な物でズボンは履いていない。
太い腕、逞しい胸板、太い足も露出していて、間近で見たいところだが、贅沢は言えない。
これはズゲベ侯爵の趣味なのだろうかと、拓が侯爵を見てしまうと

「この地を開いた戦士達の戦いの服装と言われている。
 本当は上半身には服を着ていたらしいが、祭りで力強さをアピールする為、上半身は裸になったらしい。」

拓は何も言っていないが、ズゲベ侯爵が説明をしてくれた。
拓が思わず頷くと、ズゲベ侯爵は再び前を向く。
漢達は、太鼓の音に合わせて力強い演武を舞い、観客を魅了する。
演武は力強いだけでなく、妙に色っぽい腰使いをしている。
マッチョ好きの女性から黄色い歓声が上がる。
残念ながら、スカートの下はプロレスラーの様な黒いパンツをはいていた。

その後、フロートがやって来ると、ひときわ大きな歓声が上がる。
馬に引かれたフロートは高く派手に飾られていた。
目の前まで来ると音楽隊が大通りの中心に集まり、フロートがその周りを旋回する。
3台目のフロートが旋回を始めた時、斜めに傾いたかと思うと、

「キャ~」「ワ~」

そのまま観客席の方へと倒れた。
フロートに乗っていた人は放り出され、多くの人が下敷きになっている。

「俺がフロートを動かすから、怪我人を安全な場所に運んでくれ。侯爵、丈夫な縄を用意願います。」

拓はOZ、クリームのメンバーに対し叫ぶように指示を出すと、倒れたフロートの方へ走り出した。
ズゲベ侯爵は縄を持ってくるように兵士に言うと、続けて神官を呼んでくるのと、庭を解放し怪我人を運ぶ様に指示を出す。

フロートを持ち上げようとしている所に拓が割り込む。

「魔法でフロートを持ち上げる。少し離れろ。」

拓は探索魔法で下敷きになった人の場所を確認すると、地面に手を付いて何本もの石柱を斜めに作り出しゆっくりとフロートを持ち上げていく。
十分な隙間が出来ると、OZ、クリームのメンバーが中心になって下敷きになった人の救出が始まった。
ズゲベ侯爵が用意した綱が届くと、フロートに巻き付け人々に支えさせながらフロートを更に押し上げていく。

「フロートが立ち上がるぞ。反対側に倒れない様に力を込めろ。」

縄を支えている人達が全力で反対側に倒れるのを抑えて、無事にフロートを立てると周囲から拍手が上がった。
拓は石柱を破壊し土に戻すと、怪我人が運び込まれた屋敷の庭へ向かった。

「拓、怪我の酷い状態から並べてある。直ぐに神官が来るが、先に治療を始められるか?」

ガラに言われ、拓は任せろと言って治癒魔法を掛け始めた。
フロートは比較的軽い素材で出来ていた為か命の危険がある様な怪我人は居ない。
ただ、4人は上級魔法が必要な怪我のため痛みを抑えるだけにし神官の到着を待ち、残りの怪我人を治療を始めた。

「神官が来られました。」

兵士に案内され3人の神官がやって来たので、大怪我をしている4人に対し拓が怪我をした場所を魔力で浸し、神官が魔法を使い治療を行う。

「拓殿のお話は伺っておりましたが、噂以上の魔力ですね。」
「噂ですか?それよりも、残りの怪我人を治療してしまいましょうか。」

手分けをして残りの怪我人を治療を無事に終える事が出来た。

その拓の行動を令嬢は黙って見続けていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

父のチンポが気になって仕方ない息子の夜這い!

ミクリ21
BL
父に夜這いする息子の話。

処理中です...