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267寿司

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王都に戻り、拓は直ぐに登城すると、迎えてくれたのはオリバー隊長の他に

「拓様、今回の休憩所の建設、大変お疲れ様でした。」
「拓さん、お疲れ様です。」
「無事に帰って来て良かった。」
「おひさ~。」

サリナ姫を筆頭に、勇者3人まで・・・

「こんな風に迎えられるとは思わなかったよ。」

オリバー隊長はともかく、他の4人の目的は拓にでも直ぐに分かる。
全員でそのまま厨房に居るルドルフ料理長の元に伺うと、アイテムボックスから頼まれていた魚介類を取り出した。

「これは、なかなか良い物を仕入れて来たな。
 今夜の料理はこのルドルフ、精一杯やらせて頂きますので楽しみにしてください。」

拓がシャリとか分かるのかと心配し、あえて知らないふりをして聞いてみる。

「寿司というのは固めたご飯の上に刺身を乗せれば良いのですか?」
「いえ、すし酢という酢と砂糖、塩を合わせた物を加えます。
 里香様に教わり、丁度良い物を作りましたので、後でレシピを書いてお渡しします。」

由美ではなく、まさかの里香がレシピを知っているとは・・・
拓が里香を見ると、指でVサインを作って応えていた。

「預かった金が結構余っているから戻すよ。」

拓が袋を取り出すと、

「残りは拓さんの取り分として受け取ってください。
 逆に、この世界での輸送を考えたら少ないですか?」
「いや、十分すぎる金額だよ。なら、有難く受け取っておくよ。」

4人とも拓が登城したと聞いて、教育や特訓を抜け出してきたらしく
無事に土産が届いたのを確認すると、それぞれの場所へと戻って行った。

「全く、調子が良いよな。」
「拓様、そう言わないでください。勇者様達にとって元の世界の大切な思い出の味だそうです。
 サリナ様もその様子を見て心を痛めていましたので。」

ルドルフ料理長は愚痴をこぼす拓をなだめていた。
拓も本気で言っている訳ではなく、勇者3人の笑顔を見て喜んでいた。
後は夕食を楽しみにするだけだと思っている拓に、ルドルフ料理長から一言

「拓様、故郷の料理レシピの作成は如何ですか?」
「・・・」

完全に忘れていた。
今、書いている所だと言って、その場を逃げることにした。


その後は、書物庫でポトリ教授と港町での龍神の伝承について話しをすると

「伝承が事実だった可能性が出てきました。
 もしかすると、力の玉も本当に存在する可能性が有ります。」

1通の手紙を拓に渡す。
そこには海賊船を沈めた龍神について、ドレイク船長の部下や海賊達から聞き出した内容が書かれていた。

「考古学仲間から届いた手紙です。
 船乗り達に話を聞いて竜とは異なる龍神の絵も有ります。」

手紙の最後には、日本の龍の絵が描かれていた。
流石に拓も、自分がやった事とは言えず頷くしか出来なかった。
船を沈めてしまう龍神の出現に、厳戒態勢が取られているので
龍神についての情報が得られ次第、改めて報告がされると手紙では締めくくっていた。

オリバー隊長の情報では、その後の龍神の目撃情報は無く、港町は落ち着きを取り戻しているらしい。
拓は本気で焦ったが、何とか表面上は冷静を保っていた。


その日の夕食は、国王、サリナ姫、勇者3人と拓とで行われ、出てきた料理は海鮮尽くし。

「新鮮な刺身だよ。」
「これ、なんていう魚?本当に美味しいわ。」
「やばい、拓さんマジ感謝。」

国王の前だというのに、浩司、由美、里香のテンションは高く食事に夢中だ。
今回の食事は、会話は後回しにし、とにかく食べる事に集中。
拓が結構な量の魚介類を買って来たので、明日も海鮮料理となり皆で食べることになっている。

最後の〆のデザートになってから、拓の今回の旅の話しになった。
その場でも国王から龍神の話題も出て、丁度港町に滞在していた拓に話が振られていた。

「正直、港は騒然としていたので、同じような話しか聞くことは出来ませんでした。
 ただ船は燃えて沈んだと聞いています。
 直前に他の船が海賊に追われていたので、慌ただしい中 人的な理由で火災でも起こしたのではないでしょうか。
 それで現れた魔獣の話が大袈裟に広まってしまったとか。」

拓は調子に乗ってやってしまった事を反省しながら用意していた話をしていた。
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