上 下
165 / 534

165店巡り

しおりを挟む
ポップ男爵、ジャイア男爵、ピスタ男爵は悩んでいた。貴族といっても男爵。
たまたまパーティの待合室で拓と話すことになり、3人が気に入っている店に連れて行くと約束をしてしまった。

「本当に、私達が行く店で良いのか?」
「拓殿の様子を見ると、その方が喜んでくれるみたいだからな。」
「有り難いが、緊張するな。」

町に溶け込む格好をし待ち合わせの場所へ向かうと、既にOZ3人の姿が有った。

「OZの皆さん、今日はお願いします。」
「こちらこそ、お願いします。」

拓が周囲を見ると体格の良い、3人がこちらを監視しているのが見える。

「あれは、護衛です。」
「一緒に行動しても構いませんよ。その方が護衛するのも楽で良いでしょう。」

拓に言われ、護衛の3人も一緒に行動することにした。

「美味しいケーキですね。1件目からこんなに美味しいのが食べれるとは。お腹を空かせてきて良かった。」

拓は喜ぶが、食レポとしては「美味しい」としか言わず使い物にならない。
食べ物の話で盛り上がり、次の店へ・・・

「拓様、この様な場所でお茶ですか。宜しければ我が屋敷で特別に用意したお茶など如何ですか。」
「本日は食べ歩きに連れて来てもらっていますので。」
「そこの者達は男爵ですな。」

何処で知ったのか、飾った服を着た貴族が話しかけて来た。

「私は只の冒険者ですので、その様な紅茶は同じ貴族の方と飲まれた方が良いかと思います。」

拓が断っても、自分の屋敷に誘ってくる。

「あのですね。俺がお願いして誘ってもらったんですよ。邪魔をしないで貰えますか。」

すると、話しかけて来た貴族の周囲の温度が一気に下がり、髪や眉毛、コートが霜が付いて白くなり寒さで歯がガチガチと鳴っていた。

「相手の気持ちも考えず、無理に誘うのは宜しくないですね。」

後から聞いたことのある声がする。
声の方が見ると、やはりサリナ姫。横には浩司も居る。一応、町娘の格好をしていた。

「サリナ様、浩司殿、これは失礼しました。拓殿、また機会が有りましたら宜しくお願いします。」

体を震わせながら立ち去る貴族。

「見付けられて良かったわ。私達も店を回ってみたいと思って。」
「そうでしたか。声を掛けて頂きありがとうございました。お陰で助かりました。では。」

サリナ姫の横をすり抜けようとする拓の腕が掴まれる。そして3人の男爵の方を向くと

「色々な店を回られると伺いましたが、もし宜しければ私達も同席させて頂いても宜しいでしょうか。」
「しかし、私達が案内するのは市民達が集まる普通の店なので、サリナ様と浩司様をお連れする様な場所ではありませんが。」
「それを望んでいます。拓様は当然良いですよね。あの貴族が凍死しなくて良かったわ。」
「・・・」
「それから、私達の事はサリナと浩司と呼んで頂けないでしょうか。一般市民として回りたいので。」

サリナ姫と浩司が追加となり、行動を共にしていた護衛はサリナ姫の護衛の兵士達に加わった。
ただ、姫と勇者を呼び捨てには出来ず、「さん」付けで呼ぶことになった。
サリナ姫と男爵3人が話す横で拓が浩司に文句を言っていた。

「浩司、何でサリナに食べ歩きの話をしたんだよ。」
「サリナさんをデートに誘いたくて。」
「デートって・・・護衛が付いている上に俺達に合流したら意味無いだろ。」

顔を赤くする浩司に、「頑張れよ」拓はそれ以上言うのを辞めた。
それにしても何故 浩司はこんなに初々しいのだろうと、拓は思わず欲にまみれた自分と比べてしまった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

処理中です...