欲にまみれた楽しい冒険者生活

088アンディ・ジョーンズ

遺跡までの道は整理されていて、途中で魔獣に襲われることも無い。
他にも遺跡に向かう人は多く、何事もなく着いたのだが・・・

「観光地だね。イメージと違った。」

遺跡の前には露天が並び、宿泊セットや食料、木剣等が売られている。
面白いのは冒険者食料セット。乾パンや、干し肉、水と旅をするときに持ち歩く保存食。
遺跡の中で一泊するなら、冒険者気分を味わおうというコンセプトらしい。

「ガラ、レオ、俺達も冒険者食料セットを買わないか？」

拓がはしゃいで露天に向かおうとするのをガラが止める。

「拓、俺達は冒険者だ。あえて買う必要はない。」
「なら、あれにしょう。冒険者なりきりセット。」
「お前は冒険者だと思ったが？」

拓がどうしてもと言うので冒険者セットを買って皆で試着。
拓は眼鏡に髭ずら。ついでに髪色を変える薬を飲んでカーボーイハットをかぶる。
ちなみに眼鏡とカーボーイハットは、この日の為に王都で購入したものだ。
ガラは大きな傷あとのシールを張り、拓と同じように髪の色を変え、黒い眼帯・・・眼帯は付けても目は見える。
そして、レオはカツラを被ることに。

「レオって男前だな。ワイルドと言うより凄くカッコいい。」
「そうだな、これはこれで有りだな。普段とは違う男前だ。」

拓とガラに褒められて、まんざらでもないレオ。
幾つか試してみて、一番似合う物を購入した。
３人とも雰囲気が変わり、別人のように見える。

「良いじゃないか。盛り上がって来た。ただ、ガラは盗賊か山賊って感じだよね。」
「そうなんだよな。冒険者のイメージ間違ってないか。拓は冒険者と言うより学者だな。」
「遊びなら良いじゃねぇか。準備も出来たし遺跡に行こうぜ。」


入口には受付が有り、代表名、人数、予定滞在日数を記入して使用料金を支払うと地図を渡された。
遺跡は地下４層まで有り、各層を回る数種類のスタンプラリーまで用意されている

遺跡の入口は大きな洞窟になっていて明かりが灯されている。
既に、それなりの人が居て、なかなか繁盛しているみたいだ。

「諸君、この謎の探検家、アンディ・ジョーンズが居るかには安心しろ。
　無事にこのダンジョンを攻略して見せよう。」

木剣を掲げる拓を見てガラとレオは顔を見合わせ笑うと、アンディ・ジョーンズと「宜しくな」と握手を交わした。
周りを見ると、拓と同じように木剣を掲げでスタンプラリーに挑む子供達の姿が有った。

洞窟の奥の通路から本格的な遺跡に入っていくことになるのだが、壁は黒い物質で出来ていて表面には模様が刻まれている。
通路は少し入り組んでいて、所々で岩がむき出しになったり、自然と人工物が入り混じっている感じだ。

地図を見ながら進んでいくと、通路の奥の方から子供の叫び声。
何事かと拓が走っていくと、壁一面に魔獣・・・の姿を投影した映像と冷たい風の攻撃が行われていた。
子供達が叫んでいるのを、大人達が笑って見ている。

「謎の探検家、アンディ・ジョーンズ。子供達を助ける事は出来たか。」
「へぇ、こりゃすげぇな。こいつらを倒すのは骨が折れそうだ。」

のんびり歩いて来たガラとレオは大笑いをしながら拓の肩を叩く。
拓は気を取り直してこの部屋の先に有るスタンプ台へと向かった。
遺跡は完全にアトラクション施設となり子供も大人も楽しめる様になっていた。
何かあった時の為に、冒険者の格好をして腕章を付けた職員が見回りをしている。
遺跡自体は広いため、日帰りの人達はスタンプラリーをせず自分達の興味のある所だけ見るか、真っすぐに最下層まで潜って帰ることになる。