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Episode Extra edition

Happy Valentine's Day‐1

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「モエ、次の週末旅行へ行きませんか?」

 ジャンから提案があったのは、イギリスに引っ越してきてから二ヶ月が経った時だった。

 結婚式を挙げてから早一年以上。

 日本での仕事が落ち着いたジャンは、ロメーヌの後を継ぐためにROSSETTOロセット本社へと出向から戻ってくることになったのだ。

 日本にいる間は仕事を続けていた萌衣だったが、イギリスのロンドンに引っ越してくるとなると仕事を辞めざる得なかった。

 専業主婦という選択肢も入れてはくれていたものの、ジャンにプレゼントをする資金と自分の欲しいものを買う時は自分で買いたいということから、萌衣は働くことを希望した。

 イギリス本社で仕事をしたいといっても、英語は日常会話程度で、業務として仕事をするには不安がある。

 まずは、学校に通いながら語学を再度習得し、慣れてきた頃に仕事に復帰をするという選択肢はどうだろうかと、ジャンから提供さえて、萌衣はそれを承諾するのだった。

 久々に通う学校生活は楽しかったが、慣れない異国での生活は萌衣にとってけっこうなストレスで、日本に帰りたいと夜中にこっそり泣く日もあったくらいだ。

 それでも二ヶ月も経ってくると慣れてくるもので、今では上手に息抜きをしながらイギリスの生活を楽しんでいる。

 いきなり働くという選択肢を取っていたら、もっと精神的に追い詰められていたに違いない。

 働かず、学校に通うといった選択肢を与えてくれたジャンには感謝の気持ちしかなかった。

 その日は、日本食スーパーで買った食材で、久々の日本食を夕食にしていた時だった。

 ジャンから突然の旅行の提案に萌衣は「い、行きたいですけど、ジャンさんのお仕事は大丈夫ですか?」と質問する。

 イギリスに来てからのジャンは休む暇もないほど、忙しそうだったからだ。

「二日くらいでしたら、余裕で休めますよ」

「一泊二日ですと、近場の方がいいのでしょうか?」

「ヨーロッパ圏内でしたら、弾丸になるかもしれませんが、大丈夫ではないですか?イギリス国内でもいいですけど」

 イギリスに住んでいると、一泊二日でヨーロッパに行くことができるのだと萌衣は感動した。

「すごいです!どこにしよう」

 スマートフォンを片手に、ヨーロッパと検索する。

 フランス、イタリア、ポルトガルに、ああ、でも国内でエディンバラの方でもいいかもしれない。

 有名な魔法使いの男の子の生まれた街のモデルの場所を思い浮かべて、萌衣は久々にワクワクしていた。

 だが、せっかくのジャンとの旅行だ。

 できるならロマンチックなムードになれる場所に行くのはいいのではないかと思い、「パリとかどうですか?」とジャンに尋ねた。

「パリだったら、飛行機で一時間ちょっとで行けますから、いいと思います」

 予約しておきますね、とジャンはスマートフォン一つで操作を完了した。

「ありがとうございます」

 喜ぶ萌衣に、ジャンは優しく微笑んだ。

「パリの行きたい場所、ピックアップしておいてください」

 ジャンに言われて、萌衣は笑顔で頷いた。
 
 
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