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Episode07:I protect you
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英会話は電話をかけて、辞める旨を伝えた。
先日の一件から怖くなってと話をすると、先方も理解をしてくれたようだった。
月謝の件は、十日以前だったので当月で引き落としを止めておいてくれるとのことらしい。
せっかく楽しくなり始めていたところだったのにも関わらず、残念な気持ちでいっぱいだった。
嫌がらせの電話は、最近全く来ないらしい。
しかし、いつ来るか分からないと、萌衣の行動は制限されることになった。
仕事をしている間だけが、萌衣の自由時間といえるほどで、ジャンは「犯人が無事に見つかれば、好きに過ごして構いません」の一点張りだった。
田口たちに飲みに誘われても、ジャンの許可が必要で、何かあったら困るので落ち着くまでは控えるようにと言われる始末だった。
「すみません。婚約者が過敏になってるみたいで……」
こんな断り方などしたら、嫌な奴だと思われてしまうと思ったが、田口達は「愛されてるー!」と喜んでいる。
「でもちょっと束縛系じゃない?」
名倉がウキウキした表情で言った。
夜の飲み会が出来ないとのことで、ランチくらいは一緒に取らないと気分滅入っちゃうんじゃない?とのことで四人で一緒に食事をしている。
「普段だったら束縛男でちょっと嫌だけど、今の状況を考えたら心配で仕方がないんじゃない?」
田口の言葉に鈴木が「うんうん」と頷いた。
「英会話もだめだなんて、ひどすぎませんか?自分でやれって言ったのに」
「いやいや、清水さん。そこの英会話が発端で、その変な女に付きまとわれてるんじゃない。そりゃあ、婚約者さんだって心配するよ」
「でも……」
これ以上自分のプライベートの話をしても、せっかくの楽しい会を邪魔してしまうと思って、萌衣は押し黙る。
そんな萌衣の気持ちを察した田口が「でもいいなあ。私の彼氏なんてさ」と別の話題に話を変えた。
いつも誰かに助けてもらいっぱなしで、申し訳なくなる。
こんな自分を変えたくて始めた英会話すらも、誰かに迷惑をかけて、結局は頼っている状態だ。
昨晩だって、ジャンに対して八つ当たりをしてしまった。
わがままばかりを続けていたら、ジャンもほとほと愛想を尽かして去って行ってしまうだろう。
昼食が終わった後、仕事に戻る。
企画のオーディションの合格者に、一人一人電話をかける仕事をすることになった。
事務所を通さないので、オーディションシートに記載されている本人の番号に、一つ一つかけていく。
電話をかけると、涙を流して喜んでいる人がほとんどだった。
自分の人生が、大きく変わる瞬間というのは、期待に満ち溢れている。
「選んでくださってありがとうございます!頑張ります!夢みたい……」
「こちらこそ、一緒に頑張りましょう」
彼女たちの人生を照らすつもりで始めた企画のはずなのに、彼女たちのキラキラした言葉に、少しだけ気持ちが救われた。
先日の一件から怖くなってと話をすると、先方も理解をしてくれたようだった。
月謝の件は、十日以前だったので当月で引き落としを止めておいてくれるとのことらしい。
せっかく楽しくなり始めていたところだったのにも関わらず、残念な気持ちでいっぱいだった。
嫌がらせの電話は、最近全く来ないらしい。
しかし、いつ来るか分からないと、萌衣の行動は制限されることになった。
仕事をしている間だけが、萌衣の自由時間といえるほどで、ジャンは「犯人が無事に見つかれば、好きに過ごして構いません」の一点張りだった。
田口たちに飲みに誘われても、ジャンの許可が必要で、何かあったら困るので落ち着くまでは控えるようにと言われる始末だった。
「すみません。婚約者が過敏になってるみたいで……」
こんな断り方などしたら、嫌な奴だと思われてしまうと思ったが、田口達は「愛されてるー!」と喜んでいる。
「でもちょっと束縛系じゃない?」
名倉がウキウキした表情で言った。
夜の飲み会が出来ないとのことで、ランチくらいは一緒に取らないと気分滅入っちゃうんじゃない?とのことで四人で一緒に食事をしている。
「普段だったら束縛男でちょっと嫌だけど、今の状況を考えたら心配で仕方がないんじゃない?」
田口の言葉に鈴木が「うんうん」と頷いた。
「英会話もだめだなんて、ひどすぎませんか?自分でやれって言ったのに」
「いやいや、清水さん。そこの英会話が発端で、その変な女に付きまとわれてるんじゃない。そりゃあ、婚約者さんだって心配するよ」
「でも……」
これ以上自分のプライベートの話をしても、せっかくの楽しい会を邪魔してしまうと思って、萌衣は押し黙る。
そんな萌衣の気持ちを察した田口が「でもいいなあ。私の彼氏なんてさ」と別の話題に話を変えた。
いつも誰かに助けてもらいっぱなしで、申し訳なくなる。
こんな自分を変えたくて始めた英会話すらも、誰かに迷惑をかけて、結局は頼っている状態だ。
昨晩だって、ジャンに対して八つ当たりをしてしまった。
わがままばかりを続けていたら、ジャンもほとほと愛想を尽かして去って行ってしまうだろう。
昼食が終わった後、仕事に戻る。
企画のオーディションの合格者に、一人一人電話をかける仕事をすることになった。
事務所を通さないので、オーディションシートに記載されている本人の番号に、一つ一つかけていく。
電話をかけると、涙を流して喜んでいる人がほとんどだった。
自分の人生が、大きく変わる瞬間というのは、期待に満ち溢れている。
「選んでくださってありがとうございます!頑張ります!夢みたい……」
「こちらこそ、一緒に頑張りましょう」
彼女たちの人生を照らすつもりで始めた企画のはずなのに、彼女たちのキラキラした言葉に、少しだけ気持ちが救われた。
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